中部電力をカーリング界の新女王に押し上げた、偉大なる2人の先駆者 (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・文 text&photo by Takeda Soichiro

 では、なぜ今季、中部電力が世界ランキング上位のロコ・ソラーレや北海道銀行といった格上チームとの撃ち合いを制することができたのか。

 まずは、新コーチの存在抜きには語れない。

 平昌五輪の男子代表、SC軽井沢クラブのスキップだった両角友佑(もろずみ・ゆうすけ)である。彼が昨秋、中部電力のコーチに就任。チームはその直後から、男子の世界クラスのスキップと1対4のトレーニングマッチをこなし続けた。

 戦績は「連勝中です」と両角コーチ。「僕も負けず嫌いなので、そんな簡単には勝たせたくないっすよ」と言って笑うが、彼がハウスに石をためるハイリスク・ハイリターンの"攻撃的カーリング"を仕掛けることで、どちらかと言えばシンプルなショットを選択してきた、昨季までの中部電力のスタイルに変化を促した。

 特筆すべきは、ジュニア時代からテイクショット(※ハウス内の相手のストーンを弾き出すショット)の技術には定評があったフォース・北澤育恵の進化だ。これまでなら、本人が得意とするテイクショットを選択する場面でも、ドロー(※狙った場所にストーンを止めるショット)を選ぶなど、戦術の幅が広がった。

 その結果、相手との駆け引きのレベルが上がって、北澤にテイクとドローのどちらを投げさせるか、対戦相手のチームが迷っている場面が大会中、何度か見られた。

 ドローでハウス内に石を次々に送り込んで、複数得点やスティール(※不利な先行時に得点すること)の契機を探り、相手に隙が見えたら、北澤のテイクで仕留める――ロコ・ソラーレとの決勝で明暗を分けた第5エンドは、まさにそのパターンだった。

 ほぼノーミスでショットをつなぎ、相手のミスに乗じて大量4点を獲得。試合後、「両角コーチに教わったことを全部、出せました」と勝因を語った北澤にしてみれば、してやったりの展開だったのではないだろうか。

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