中部電力をカーリング界の新女王に押し上げた、偉大なる2人の先駆者 (3ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・文 text&photo by Takeda Soichiro

 また、両角コーチは大会中、その日の最終試合終了後の「ナイトプラクティス」というシートを公式に使える時間に、フィフスでマネジャーの清水絵美とともにアイスに乗っていた。そこで両角コーチは、ストーン固有のクセを把握する作業を「命をかけてやりました」と言う。

 両角コーチがこのストーンチェックを担うことで、詳細なストーン情報がチームにもたらされ、同時に選手の疲労軽減にもひと役買っていた。そうした献身も、チームの高いパフォーマンスにつながったのだろう。

 そしてもうひとり、メンタル面でチームに刺激を与えた人物がいる。

 2002年ソルトレークシティ、2006年トリノ、2014年ソチと、3度の五輪に出場している"元祖カーリング娘"の小笠原歩だ。

 昨年9月、中部電力の要請に応じる形で小笠原は軽井沢を訪れ、チームとの特別ミーティングに参加した。

 小笠原本人は、「たいしたことは言っていないので(ミーティングの内容は)秘密です」と言って笑ったが、戦術面でのアドバイスから、トレーニングへ向かう姿勢、勝利への執着など、長年世界と渡り合ってきた彼女なりの経験と実感をチームに伝えたようだ。

 大先輩からのアドバイスに、松村は感謝の言葉を口にする。

「他のチーム(の選手)からどんなふうに見られていたのか、客観的に話を聞くことができましたし、(チームや選手に対して)あそこまでストレートに厳しく言ってくれる人はこれまでいなかった。貴重なミーティングになりました」

 国内トップへ、さらには世界に挑む"新生"中部電力のメンタルの基礎は、シーズン冒頭、小笠原によって植えつけられたものかもしれない。

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