2018.06.05

「笑顔で登る女」野中生萌のクライミングは、
みんなをハッピーにする

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「これを理由に負けたとは言いたくないので、100%……、120%の力を発揮してがんばります」

 6月2日~3日に行なわれたボルダリング・ワールドカップ八王子大会は2400人を超える観客が見守るなか、男女とも決勝戦は最終第4課題まで優勝の行方がもつれる熱戦が繰り広げられ、女子は野口啓代(のぐち・あきよ)が今季W杯3連勝を決め、男子はイタリアのガブリエレ・モロニが初優勝した。

課題をクリアして喜びを爆発させる野中生萌 大会初日の女子予選をグループ1位で通過した野中生萌(のなか・みほう)は、自国開催のW杯優勝に向けての調子を訊ねられると、打ち明けなくてもバレるほどのしゃがれた鼻声で、大会4日前に風邪をひいたことを明かした。

「先週は調子がよくて、その週末に大会があったら優勝できるんじゃないかというくらい自信があったんですけど。風邪なんて年に一度くらいなのに、それがここに当たっちゃうなんて」

 4月に開幕してからの1ヵ月間に世界各地で4大会を戦ってきた疲労が、季節の変わり目で出たのだろう。だが、そう語る野中の表情に、悲壮感は微塵もなかった。

 予選を振り返って、「体調が悪いわりにはしっかりと集中して、いい内容で終われたかなと思います。明日にもつながった」と語った後に続いたのが、冒頭のコメントであった。

 はたして、野中は準決勝を4位で通過すると、決勝では最終課題まで優勝争いを演じて2位。体調不良で大会直前に最終調整ができなかったことを感じさせない、すばらしいパフォーマンスを見せた。

 今シーズンはボルダリングW杯の開幕戦で優勝し、その後は今回の八王子大会を含めて4戦連続で2位と安定した成績を残しているが、ここにこそ野中の成長が見て取れる。

 それは、野中自身も実感している。

「自分の登りのイメージと、実際の自分がしっかりと一致していることが一番大きいですね。去年とはかなり違う気がしています。大会の成績もそうですし、練習していても全体的にベースアップしたかなという感じはあります」