金メダル候補・渡部暁斗が強い理由が一読でわかる「深いインタビュー」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 五十嵐和博(人物)、赤木真二(競技)●写真

 以前のようにジャンプで出遅れていたころは、クロカンに強い選手と一緒に滑ることも多く、その中で学ぶことも多かった。しかし最近は、渡部自身がジャンプで上位にくるため、走りを得意とする選手と勝負することが少なくなった。

2月3日のW杯白馬大会では自己最高となる今季5勝目を上げた2月3日のW杯白馬大会では自己最高となる今季5勝目を上げた

 代わりに、クロスカントリーやバイアスロンのトップ選手の走りを見て、それをイメージすることも多い。ジャンプも同じで、スペシャルジャンプのトップ選手を見て、自分と何が違うかを考える。コンバインドのトップではなく、その先を見ることが楽しいと感じるという。

「体に関しても、まだできてはいないけれど、全身の骨の一つひとつまで意識できるようにと取り組んで、どれだけ動かせて、どれだけ有効な可動域を作れるかを考えています。そのおかげで、自分の体の変化に細かく反応できるようになってきました。自分の体を知ったことで、今回のように肋骨を痛めた時でも、その状態でどれだけ最高のパフォーマンスをできるかを考えられる。

 細かく自分の体と対話をしながら、トレーナーにも助けてもらうことによって、あとは痛みを我慢するだけという状態になれたから、前よりパフォーマンスが安定しているのでしょう。それにケガが治ったあとも、体のバランスの崩れている部分を細かく把握することによって、調整法がわかる。これまで手首を折ったり、細かいケガを含め、自分の体と向き合っている時間が多かった。それが今の強みになっていると思います」

 ソチ五輪後は、古武術や空手、剣術などにも興味を持って学んでみた。昔の人たちがスポーツ科学もない中で作りあげた動きを勉強することで、さらに一歩足を踏み込んだ。

「それがすべてというわけではないですが、自分の持っているものとミックスすることによって、より自分にいいものが見えてくる。本を読んだらオッケーというのではなく、日々自分で試しながら、何がよくて何が悪いかを見つけていかなければいけない。

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