トリノで目撃した荒川静香の「超人的な冷静さ」と日本メディアの愚行 (4ページ目)

  • photo by Kyodo News

 当時、2002年に14歳で4回転サルコウを成功させた安藤、2005年に15歳でグランプリファイナルを制した浅田真央の台頭で、日本のフィギュアスケート人気は高騰していた。

 現地トリノには日本から多くの報道陣が詰めかけ、練習から選手たちの様子を追い続けた。もちろん、ルールに則った取材ならいいのだが、あるときは、キャスターに起用されたタレントが練習中の選手を呼び止め、リンク上で長いインタビューを行なう場面もあり、その選手のコーチが「体が冷えてしまう!」と激怒していたのを覚えている。

 本番の演技を終えたミックスゾーンでも、選手とキャスターを一緒に映そうとする撮影スタッフが定められた取材エリアをはみ出すことが多く、他国のスタッフに足蹴りをされている場面も目にした。これは後に聞いた話だが、一連の行為が大会側の"逆鱗"に触れ、そのメディアクルーは会場の端に取材場所を移されたという。

 思わぬかたちで"フィギュアスケートフィーバー"を再確認した私は、トリノ五輪が終わってから2週間も経たないうちにスロベニアに飛び、世界ジュニアフィギュアスケート選手権を取材した。そこで1位となった韓国のキム・ヨナと、2位の浅田の強さは段違いだった。

 以降、シニアの舞台で幾多の激闘を繰り広げる2人の才能は、4年後のバンクーバー五輪でのフィギュア史に残る演技で世界を熱狂させることになる。

(バンクーバー五輪につづく)

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