銀メダル獲得も通過点。渡部暁斗が求めるのは「厳しい争いを勝ち切る力」 (3ページ目)
ノーマルヒルで可能性を大きく感じたあとに臨んだラージヒル。巡ってきたチャンスに、暁斗は積極的かつ冷静な走りをした。5位スタートですぐに追いついてきたルゼックが予想に反して前に出ようとしない中、2位集団を引っ張り、1.3kmではトップのサイドルとの差を41秒4に縮めると、2.5kmでは37秒7、3.8kmでは25秒台にまで詰めた。
それは暁斗にとって作戦通りの展開だった。
「ひとりで引っ張るのは難しいので、交代しながらというのは頭にありました。自分が先に引っ張ってしまえば、そのあとは下がっても文句は言われないので2周目まで引っ張り、『あとはもういいでしょ』という感じで後ろに下がった」
7.5kmを過ぎたあたりから、先頭を捕まえて5人の集団になったがここで2人が脱落。最後は思惑通り3人の争いになり、競技場入り口手前の短い登りでルゼックが仕掛けた。「まだ足は残っていましたが、あれがスパート力の差というか、実力の差でした」と振り返ったように、2位は確保したものの、そのスパートには対応しきれず、ゴール後は、さりげなくガッツポーズをしただけだった。
「自分のジャンプがよかったというのもあるけれど、他のドイツの選手が失敗したり、いろいろなことが重なって獲れた銀メダルだから、『獲ってやった!』というのではなく『こういう時もあるかな』くらいの感じでした。もし、ルゼックに食らいついて最後までもつれて、足差の勝負まで持っていけていれば大きなガッツポーズもできたかもしれないけど、いつものパターンでやられたので......」
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