「500mは無敵」の小平奈緒。平昌の金メダルへの必殺技を手に入れた (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Fujita Takao/PHOTO KISHIMOTO

 昨年5月から日本に拠点を戻し、2年間のオランダ生活ような体への不安やストレスもなく、幸せな気持ちで競技に集中できている小平。今季も誰かに勝つというよりも、1戦1戦自分の記録を伸ばしていくことだけを意識し続けたことが今回の結果につながっているという。「だから今回は37秒1ですが、また来年はここで36秒台が出るように練習していきたいなと思いました」と笑顔を見せた。

 今回の小平のレースを見ていて感じたのは、出遅れたというスタートからの滑りにも力みはまったくないこと。男子選手のような荒々しい力感もほとんど感じられず、同走の選手とはまったく違った。それでも100m通過は10秒31が出て、さらにその後も軽やかな動きはまったく崩れずゴールまで続いく。37秒13という大記録が出たのが信じられないような、ある意味では完成された滑りだった。

 本人にそれを問いかけると、「そうですね。スムーズでしたね。でもそれは練習通りという感じです。練習でもよかったので」と、当然のような表情で答えた。

「無駄な動きを抜こうとか力みを抜こうというのではなく、ブレードと氷のやりとりの中で、自分のベストのタイミングで氷を押せるのが一番いいので、その辺を外さないように意識しています。でも今の滑りがスムーズなのは1月になってからブレードを変えたので、その刃の違いが大きいとも思います。それをこれからもっと使いこなしていけば動きも速くなってくると思うし、まだまだ改善点はある。それが出できれば100m通過は10秒2台にもなると思います」

 こう話していた小平は、翌日行なわれた1000mでも低地自己最高記録を0秒65塗り替える1分14秒43を出して2位になった。500mだけではなく1000mでも戦えるのが、真のスプリンターだという自負も持つ彼女の、さらなる一歩が、五輪開催の地で踏み出された。

■冬季競技 記事一覧>>

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る