スポルティーバ句会。名句はスポーツシーンから生まれる...... (3ページ目)

  • 石塚 隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • 村上庄吾●写真 photo by Shogo Murakami

 2番目に高評価だったのは5点を獲得した『天仰ぎ芝に流るる玉の汗』、当サイト副編集長・上杉の作品である。この句では、描かれている情景ばかりではなく、「句の形」についても言及された。 

  ●堀本評
 描かれている世界も美しいし、句の形も美しい。『流るる』という古語を使っているのがポイントで、通常ならば『流れる』を使う。しかし『るる』にすることで、玉の汗が余計丸っこく感じられる効果があります。字面で見せるというか、俳句って漢字やひらがな、カタカナ、古語など表記を吟味して選択することで、1句の表現を効果的に深める面があります。また情景としても、試合に勝ったのか負けたのか、あるいは練習なのか、その辺りは書かれていないけど、読み手の想像力を促す感じも効いている。つまり俳句というのは余白の部分が多く、いかに読み手が想像力を膨らませられるかといった非常に日本人的な文芸でもあるんです。そういう意味でこの句は省略も効いているし、字面もおもしろいので私は特選にしました。

●市橋評
 とても美しい句だし、情景がすぐに思い浮かんだので特選にしました。この芝生の上で仰向けになり、空の青を見て、汗が滴っている感じ。すごく瑞々しいし、キレイな流れで、夏という季節をすごく感じましたね。

●作者(上杉)評
 季語の辞書である俳句歳時記で『汗』を引いたら『玉の汗』というのがあって、この言葉にすごく惹かれたんです。『玉の汗』を使い学生が最後の大会で負けた姿をイメージし、天を仰ぎ、悔しさや充実感が入り混じるシーンを描いてみたくなり、この句ができました。

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