アジアパラ閉幕。メダル143個も2020東京パラに募る不安 (3ページ目)

  • 瀬長あすか●取材・文 text by Senaga Asuka
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

 しかし、団体競技の現実は厳しい。車椅子バスケットボール男子日本代表の及川晋平ヘッドコーチは、決勝で敗れた原因のひとつを「緻密なバスケを組み立てているが、選手たちがそれを理解しても、精度をなかなか上げられない。熟度がないからミスが生まれる」とし、「世界と戦うためにはもっと強化合宿を増やしていかないと......。体育館をひとつ借りるのも苦労する現状を変え、長期的に練習する場所が欲しい」と訴えた。

 さらに、及川氏は専門性を持ったコーチやスタッフが無償でチームに帯同している現状にも警鐘を鳴らす。仕事としてチームのために動ける人がいなければ、十分な強化は望めない。大槻団長も「もうボランティアでやっている時代じゃない。(国などの政策による環境)整備が行なわれるのを待っていては遅くなる。いますぐ対策をしなければ」とコメントした。

 一方、環境の変化により成果が生まれている選手もいる。

 陸上競技の佐藤圭太(中京大職員)は、陸上競技のオリンピアン為末大氏からのアドバイスで、上半身のビルドアップに取り組んでいる。今年8月に競技用義足を跳ね返りの強いものに新調し、無理なく義足をたわませられるように筋力アップ。身体づくりも走りも未完成というが、今大会で100m、200m、4×100mリレー(片下腿切断などのクラス)の3冠に輝いている。

 パラリンピック選手が今までよりもナショナルトレーニングセンター及び国立科学スポーツセンター(ともに東京都北区)を使用できるようになり、オリンピック選手などのトップアスリートと交流することで、佐藤のような変化がこれから多く生まれるのではないだろうか。

 ロンドンパラリンピックから2年が経ち、ここから2年後のリオ、そして6年後の東京に向けた戦いがいよいよ本格化していく。

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