【月刊・白鵬】注目の9月場所。狙うは宮城野部屋の「2階級制覇」 (2ページ目)
「期待」という意味では、私の所属する宮城野部屋から久しぶりに新十両力士が誕生するという、うれしい出来事がありました。以前、このコラムでも"大物新人"として紹介した、山口(雅弘)改め大喜鵬(だいきほう)のことで、彼にはとても期待しています。
大喜鵬は、高校相撲の名門・鳥取城北高から日大相撲部に進み、今春初土俵を踏んだばかり。幕下15枚目格付け出しという別格の地位からスタートして、当初はプロのペースに馴染めないところもありました。それでも、3場所で十両に昇進したのは、さすが"大物"と言っていいでしょう。
大喜鵬は、引退した大関・琴光喜関の高校、大学それぞれの後輩。これまで、日大出身の力士が宮城野部屋に入門したケースはなかったのですが、「横綱のもとで相撲をやりたい」と、私の部屋にやってきました。そうした意欲的なところも、早い出世につながったのだと思います。
彼が入門したことで、部屋の空気もガラリと変わりました。三段目や幕下でくすぶっていた若い力士が「負けてたまるか!」と、積極的に稽古するようになって、みんなで切磋琢磨するような環境が築かれました。それが、部屋を活気づけるだけでなく、彼が成長するうえでもよかったのではないでしょうか。
秋場所は、大喜鵬にはふた桁勝利、いや十両優勝も狙える力があると、私は見ています。ただ、稽古場でいつも彼には言い聞かせているのですが、まだまだ相撲が小さい点が気がかりです。今はいいかもしれませんが、小手先で相撲を取っていては、次のステップに行ったときには勝てなくなってしまいます。そうしたことを考えると、まずは目の前の勝利よりも、その先の勝利をつかむために大きな相撲を取ってほしいな、と思っています。
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