『フレンズ・オン・アイス2026』40歳を迎えてもなお、高橋大輔が見せる恍惚の時間 (2ページ目)
「しーちゃん(荒川)の『トゥーランドット』(トリノ五輪のフリー)は何度も観てきているんですが......2006年からのいろんな思い出が湧き出てきて。きっと、お客さんもこんな気持ちになるんだろうなって思いました。(荒川とは)15歳で初めて会話を交わすようになったんですけど......今回、ショーでみんなとリンクで集まったとき、ふと月日を感じたんですよね。懐かしさというか、いろんなことあったんだなって急にエモくなっちゃって、"ありがとう"って感じました」
そう語った高橋自身、第二部で万感の思いをこめてソロを滑っている。黒いシャツ、黒いパンツ、黒いスケート靴で、物憂げでけだるい律動のなか、ダンスで緩急をつけ、生きる強さのようなものを表現した。しっとりとした曲調に、激情を表現できるのは彼の真骨頂だが、革新も忘れていない。「AIで作った」という曲は、彼にしては珍しく歌詞が入ったプログラムだったが、『氷艶』シリーズなどで様々な表現を経験するなか、新たな境地に入ったということか。
「(最近は)カップルでのパフォーマンスが多かったので、ひとりでのパフォーマンスは不安な部分もあったんですが......今まではあまり歌詞が入った曲はやらなかったんですが、"歌詞で表現する"ということが、今になって、やっとしっくりくるようになってきたな、と滑ることができました。すごく新鮮で......ジャンプはしなかったですが、40歳になったからこそ、できる表現なのかなって思います」
そう振り返った高橋は、表現者としての道をどんどん広げている。画期的なアイスショー『滑走屋』では、積極的に若手スケーターたちを招き、細部までスケーティングにこだわる姿で啓発。彼自身の表現だけではなく、周りを巻き込んだフィギュアの発展に貢献している。今回の『フレンズ・オン・アイス』でも、子どもたちともグループナンバーを滑って、違う顔を見せた。
「自分は、キッズと一緒に滑るというのをやっていなくて......今回、滑らせてもらって、"お父さんってこんな気持ちなのか"って思いました(笑)。こんなに温かい気持ちでスケートを滑ったことはなかったかも、って。"いつか、何かを誰かに託す日が来るんだな"とか、未来の自分に思いを重ねながら、そんな日が来るかわからないですけど、そういうのを感じられて幸せです!」
過去、現在、未来という時間の流れを、真夏のリンクで味わえる。フィギュアファンには極上のひとときだろう。『フレンズ・オン・アイス』は8月28日~30日の3日間、全6公演が行なわれる。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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