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羽生結弦「悲しみや傷との付き合い方を理解しながら前に進んできた」 『notte stellata』で示した震災を伝え続ける決意 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Toshimi Oriyama

【表現のために基礎の「き」から】

 滑りの雰囲気もこれまでと変化しているようにも見えた。羽生はその要因についてこう説明する。

「ダンスの要素を増やした感じはしています。あとは身体の使い方の理論がわかっているからこそできる連動性であったり。ボクサーを見れば、すごく強い人のパンチはきれいに身体が動いて、そこには曲線美がある。それと同じようにきっと僕らの身体表現という部分においても、理にかなっているからこそ、『人間としてきれいだよね』という動きがあるなと思って。そういうものをひたすら感情の土台として入れていったイメージがあります。

(2018年)平昌五輪のあとに、表現や芸術には技術が基礎にあるという話をさせていただきましたが、あらためてメンテナンス期間を経て、感情を乗せるためにはやっぱり技術的なことや基礎的なことがある。そのうえにやっと感情が乗せられるんだなと気づき、一つひとつ丁寧に作ったプログラムではあります」

 プロ転向後に毎年続けてきた単独アイスショーだったが、今回は充電期間を経て約8カ月ぶりの表舞台だった。その間には身体の動きについて学び、これまでいかに我流だったかということをあらためて発見したという。

「フィギュアスケートは人気の競技ではあるけど、実際やっている人口は多いスポーツではないし、科学的な根拠のある研究がたくさんあるかと言われたらそんなこともない。そういう研究的には未開発なスポーツのなかで、どれだけ根拠のない練習と、根拠のない技術を身につけてきたというのをあらためて実感しました。そのうえでは、ほんのちょっとかもしれないけど、フィギュアスケーターとしてだけではなくてスポーツに携わる人間、ダンスに携わる人間として『こういう身体の使い方をしなければいけない』という基礎の『き』くらいは学んでこられたのかなという気はしています」

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