【フィギュアスケート】鍵山優真はどうやってマリニンに追いつこうと考えているのか? (2ページ目)
【大技を入れるかどうかは未定】
鍵山のGPシリーズ初戦は11月7日開幕のNHK杯。昨季終了時に話していた「早めの始動」も今季はできていて、今は余裕を持って取り組んでいる状況だ。そのなかでジャンプ構成についてはこう話す。
「ショートに関してはトーループのコンビネーションとサルコウでいこうと思っています。ジャンプも本当にいい状態ですし、プログラムに関してもこの4年間を通して自分らしさを出すものをつくっていただいたと思うので、(2022年)北京五輪の自己ベストに少しでも近づけるようにしていきたい。
フリーは、GPシリーズはまだわからないけど、どの試合も自分が100%自信を持って臨める構成でやりたい。10月の西日本インカレでサルコウとトーループ2本の構成をしっかりとやり、その感触を見てフリップを入れるかどうか、慎重に判断していきたいです」
同時に、昨季口にしていた4回転ルッツの導入を完全に白紙に戻したわけではない。
「まずは本当に『着実に』ということで、今の構成でしっかりノーミスの演技をしてからフリップを入れたいと思うので、ルッツまでは今は考えてはいません。ただ、練習は続けていこうかなとは思っています。やっぱりフリップを入れただけでは満足はできないところもある。
夏の試合からすごく感じていたことですが、4回転が2種類でも他の部分で点数が評価されて思ったより点数が出たので、今の状態でもしっかり完成していければいい点数が出るとは思います。でも、自己ベストの更新を考えると、やっぱりフリーでは4回転はもっと必要になってくる」
勝負のフリーに今季選んだのは、作曲家のクリストファー・ティン氏に依頼したオリジナル編曲の『トゥーランドット』。
「振り付けの段階からすばらしいものになりそうだという予感もあって、練習からすごく楽しく滑れています。夏の試合やCSを通して試合の雰囲気やお客さんの声援がいい相乗効果になってプログラムの真価を発揮するというか、新たな魅力を引き出すものとなっていると思います」
鍵山は笑顔でそう話す一方で、その曲はまだ完成版ではないと言う。
「このあとに、オペラ歌手のテノールがメインメロディーの部分に入るみたいで。僕としては今の状態で曲を聞くだけでも感動できるぐらいにすばらしいものだけど、完成版は自分でも想像がつかないくらい。迫力は本当にすごいので、それに負けないくらいに自分のスケートもパワフルで繊細でありたい」
最強のライバル、マリニンに対抗するためにと過剰に身構えず、着実なステップアップを考えている鍵山。ジャンプの構成難度の進化や、完成版『トゥーランドット』など、鍵山優真への期待はこれからさらに膨らむ。
著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。
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