高橋大輔がこだわる「どれだけ人の心をつかめるか」 アイスショー『氷艶』で世界観炸裂 (3ページ目)
【役と重なり合う演技は必見】
高橋は『氷艶』シリーズで、さまざまな役を演じている。その巧みさは、彼の天性のセンスのよさもあるだろう。しかし、それは唯一無二のフィギュアスケーターとして表現にこだわってきたからではないのか。
今回、楽々森彦命役で出演した田中刑事 ©氷艶hyoen2025この記事に関連する写真を見る
以前、『氷艶』の派生的作品である『LUXE』で、田中刑事(今回は楽々森彦命役で出演)とのギリシャ神話「ナルシス」の演技が大きな話題になった時も、彼はこう説明していた。
「自分のことが好きっていう感覚は、僕自身は持っていないですが、スケートに関してだけは、『見てほしい』『見て』っていう気持ちになれます。スケートは自信を持てるところもあるので、本当は恥ずかしくて自分らしくなくても、スケートなら入り込めました。
たとえば光源氏の台詞も、最初は稽古から恥ずかしかったんです。でも、それこそ『解き放て!』じゃないですけど、その指導も現場でもらって、やっているうちにどんどん気持ちもよくなってきました。自分じゃないなとも思うけど、自分はナルシストだって思い込むことができて。色っぽいものは好きだから、そこを目指したのもありますね」
今回の『氷艶』では、高橋は温羅の激動の人生を体現する。どちらの人物も、岡山出身だけに不思議に重なり合う。たおやかで毒々しい映像ともコラボレーションし、まるで古代の岡山にタイムスリップしたような気分になるかもしれない。
横浜での公演は全5回。7月6、7日と行なわれる。
『氷艶』シリーズでは毎回新しい世界観を披露している ©氷艶hyoen2025この記事に関連する写真を見る
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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