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高橋大輔×増田貴久『氷艶』が問う「大義」と「悪」 役に重なった高橋のスケート人生 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki

ショーは「NEWS」増田貴久と高橋のダブル主演 ©氷艶hyoen2025ショーは「NEWS」増田貴久と高橋のダブル主演 ©氷艶hyoen2025この記事に関連する写真を見る

 吉田栄作が扮する影帝によって、「殺戮人形」として育てられることになった増田演じる吉備津彦は、国内のさまざまな町や村を容赦なく攻め滅ぼす。

 しかし、純粋で明るい温羅と戦い、人間性が芽生えることに戸惑う。言動に優しさがあふれ出し、「兵器」と蔑まれた男が真剣に戦いの意味を問うようになるが、それは苦しさも伴っていた。

「心なんか持たなきゃよかった」

 吉備津彦の慟哭(どうこく)が胸に刺さる。その吉備津彦にキジ、猿、犬の役割で付き従う財木琢磨、田中刑事、島田高志郎は、作品内で観客の笑いを誘うやりとりを見せる。

 シリアスな舞台を重く沈ませることなく、とても柔らかくしている。それは堤幸彦監督の巧みな演出と言えるか。また、SUGIZO(LUNA SEA/X JAPAN)が生演奏する音は、それだけで特別な演出だ。

 一方、高橋が演じる温羅は刀剣をにぎり、吉備津彦と戦った興奮がどうしても収まらない。自分のなかに生まれてしまった暴力性を持て余し、身をよじることになる。吉備津彦と対比的に戦いに取りつかれるようになり、運命に翻弄されることになる。

 そして温羅と幼馴染の側近・千秋(青山凌大)、温羅と結婚の誓いを交わした阿曽媛(森田望智)は迷う温羅に寄り添い、身を挺(てい)して「本当の温羅」を取り戻そうとする。

フィギュアスケート経験者の俳優・森田望智も出演 ©氷艶hyoen2025フィギュアスケート経験者の俳優・森田望智も出演 ©氷艶hyoen2025この記事に関連する写真を見る

 少年時代からふたりが交わした友情、蛍の光に思いを寄せる平和への願いが交錯。そこで祈る女、幽(かすみ)を演じる村元哉中が鎮魂を込めて氷上で舞う姿は、せつない思いを増幅させる。

 物語は悲劇に向かい、その流れは誰にも止められない。天の声に「戦え」と突き動かされる温羅が、最後に決断するのは......。

高橋とアイスダンスのカップルを組んだ村元哉中は幽を演じた ©氷艶hyoen2025高橋とアイスダンスのカップルを組んだ村元哉中は幽を演じた ©氷艶hyoen2025この記事に関連する写真を見る

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