【フィギュア】イリア・マリニン「7本の4回転こそ僕のアイデンティティになるもの」 世界選手権2連覇で感じる「責任」とは? (2ページ目)
【リスキーな"7本の4回転"にこだわる理由】
ーー次にフリーですが、ショートは緊張したと話していましたが、フリーはいかがでしたか?
フリーはまったく緊張しませんでした。そしてフリーを演じてみたことで、ショートでなぜ緊張したのか、ちょっとわかった気がしました。ショートは、ミスなくパーフェクトにジャンプを降りなければなりません。ちょっと義務的なイメージがあります。でもフリーは、自分にとっては、ただ自分の能力を信じて挑むだけでいい。途中でミスがあっても、まだ諦めないという気持ちで次に進めるので、緊張しなかったのだと思います。
ーー世界選手権2連覇となりましたが、1回目の優勝からどのようにモチベーションを上げてきたのでしょう?
つねに自分をプッシュし、自分のスケートの限界に挑戦するという思いです。ジャンプの技術も、スケーティングスキルも、創造性豊かな演技力も、すべての進化を実感したいと思っています。自分の限界を超えるところに目標を設定することで、自分を追い込み、練習を続けてきました。
ーー今シーズンは出場したすべての大会で優勝しました。ご自身では、どこが一番成長したと感じていますか?
今シーズンから得た一番のものは、メンタル面の成長です。シーズンを通して力を発揮し続けたことで、自分の戦い方への不安がなくなりました。そして、この世界選手権の会場に到着した時、昨季のモントリオールでの世界選手権とはまったく違う感覚がありました。「優勝したいな」ではなく、「優勝できる」という気持ちです。取り組んできたトレーニングも違いますし、技術も上がっていますが、何より自分を疑うことがなくなりました。ただ自分らしく、自分の仕事をすればいい、という感覚がありました。
ーー今の採点方法からすると「7本の4回転」は、リスクが高すぎて、結果的に得点が伸びない状況にあります(今回の世界選手権でも回転不足などがあった)。それでも大舞台で挑戦したことの意義は何でしょうか?
これは、あくまでも自分自身への挑戦です。勝つための戦略を考えたのではなく、自分自身が何者なのかを証明するために、挑んでいることなんです。そして、この「7本の4回転」こそが、僕という人間のアイデンティティになるものであり、それと同時に今のフィギュアスケートにおける「無敵のジャンプ構成」だと考えています。ですからオフシーズンもこの「7本の4回転」を練習し続けて、マスターしていきたいと思います。
ーー世界選手権を連覇した喜びと、「7本の4回転」はまだ決めきれなかったこと、どちらの気持ちが大きいですか?
難しいですね。「7本の4回転」は、本当に僕にとって理想的な構成で、これを完璧にして、気持ちよく滑りきりたいのです。それは新たな歴史を刻むことになります。ただ今回、母国開催の世界選手権で、全力を尽くして2つ目のタイトルを獲れたことは本当に幸せです。だからうれしさと悔しさは半々ですね。
2 / 3