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【フィギュアスケート】「一回、全部捨てました」樋口新葉の変化と強さ 再び世界の舞台へ (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha

【大きかった1年間の休養】

 23日のフリーでも、SP同様に後半の3回転ルッツで転倒、ふたつのジャンプで「q」マークがつく回転不足を取られるなど、得意だったジャンプはまだ安定感を取り戻していない。それでも3つのスピン、ステップではすべてレベル4判定をもらうなど、シーズン終盤に入って演技に磨きがかかってきたことは間違いない。ジャンプの失敗がありながらも130.06点を出せたことも含めて、樋口本人はしっかり結果を受け入れていた。

「フリーは、6分間練習まではそんなによくなかったわりにはよくまとまっていたし、ジャンプの軸も悪くなかった。ただ、ちょっとスピードが足りなかったかなと思います。世界選手権まであと1カ月しかないので、プログラムを大きく変えることはないんですけど、すべての要素でGOEのプラスが取れるような質のいいエレメンツをしなければ、合計得点で210点から215点には持っていけないと思っています。

 この四大陸選手権は久しぶりの大きな大会で、世界選手権に向けて自信をつけられたらいいなと思って臨んでいる試合です。(経験できたことで)練習してきたことをそのまま大きな大会で出せるという自信をつけたいですね」

 2018年の平昌五輪では、あと一歩のところで五輪代表の座をつかむことができなかった。それからの4年、五輪出場を目指して戦うなかで、しだいに樋口から屈託のない笑顔が消えていき、こわばった表情を見せるようになっていた。そして悲願の出場を果たした北京五輪では、団体ではメダルを獲得し、個人のシングルでは5位入賞を飾って「大きな達成感を味わった」。だが、それによりモチベーションが低下し、1シーズンの休養を取ることになる。

 この休養が、乾ききった樋口の心に、再び潤いとゆとりを取り戻すきっかけとなった。3歳で始めたスケートを滑る楽しさを思い出すことにもつながり、ガチガチに縛られていた自分を解放することができた。そんな変化が、樋口を再び世界の舞台に引き寄せたのだろう。

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