羽生結弦「自分の心と正義を信じてまっすぐ進んでいきたい」単独ツアー完走で得たもの
【千秋楽で高難度構成をノーミス】
羽生結弦のアイスショー「Yuzuru Hanyu ICE STORY 3rd "Echoes of Life" TOUR」が2月9日、千葉・ららアリーナ東京ベイで千秋楽を迎えた。昨年12月7日の30歳の誕生日に横浜で開幕し、3都市7公演を完走した羽生は、「とにかく頑張ったなということと、このアイスストーリーには本当に類を見ないぐらい多くの方々が関わってくださって。感謝の気持ちでいっぱいです」と語った。
3都市7公演の単独ツアーを終えた羽生結弦 photo by Echoes of Life Officialこの記事に関連する写真を見る
廃墟になった世界にただひとり誕生した主人公の「Nova」が、命や生きることの意味を探求する旅を続けるという、自ら執筆したストーリー。公演後、「これ以上ないなという出来で締めることができた」と本人が話した千秋楽の演技への思いの強さは、オープニングの『First Pulse』の力強い滑りから感じられた。
ショー前半の最大の見せ場は、氷上に長時間とどまってピアノコレクション5曲を踊り、『バラード第1番ト短調』へ続く構成。言葉が五線譜に描かれた音符となって流れるプロジェクションマッピングのなかでの滑りだ。3曲目の『Keyboard Sonata in D Minor,K.141』では、4回転トーループとトリプルアクセルをきれいに決めた。
そして『バラード第1番ト短調』は、プログラム後半にトリプルアクセルと連続ジャンプを持ってくる難しい構成で、運命を信じたいという気持ちを表現した。
「本当に最初からかなり苦戦をして、ショートプログラムの旧採点ルールでの後半に2回ジャンプを跳ぶ。それがトリプルアクセルと4回転+3回転だということの難しさをあらためて感じました。フリーとはまた違う緊張感。回復する余地がないのがショートプログラムの特徴で非常にいろんなものが詰まっているからこそ、フリーよりも難しいんだなということを、今回ツアーを通して感じました。
さらに、ピアノ曲の前までに4曲やっていて、すでにつらいなと思いながら出ていく難しさ。僕の希望で照明つきにしてもらいましたが、会場によってリンクサイズが変わるということもあって非常に調整は難しかったですが、本当に製氷の職人さんも含めて皆さんが一生懸命やってくださったおかげでなんとかできました」
こう話す演技は、最初の4回転サルコウをきれいに決めたあと、2本のスピンを滑ってからトリプルアクセルを決める。そして最後には4回転トーループ+3回転トーループもしっかり決めるノーミスの滑りと、底力を見せるものだった。
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著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。