羽生結弦「自分の心と正義を信じてまっすぐ進んでいきたい」単独ツアー完走で得たもの (3ページ目)
【自分の心と正義を信じてまっすぐ】
7回の公演を通して完成させたストーリー。そこで得た思いとは。
「この物語を執筆して、実際ツアーを完走して自分自身の考えが深まったことがひとつだけど、未来なんて誰にもわかんないなということが、このツアーを滑りながら自分の心のなかに一番残ったものです。それは北京オリンピックもそうでしたけど、どんなに努力しても報われないなって思うこともあるし、どんなに一日一善をしてどんなにいいことを繰り返していたとしても不幸なことが起こってしまうのが未来だし。だからこそ簡単に、こんな生きざまとは言えないんですけど。でも生きている今をまっすぐ、自分の心と自分の正義を信じてまっすぐ進んでいきたいなっていう気持ちです」
そして公演を経て、成長の手ごたえも得たという。
「新しいトレーニングもまた始めてみました。可動域を広げるとか、単純に柔軟性を上げるというだけではなく、使える体の動きとリカバリーをどれだけ早くできるかということ。それに自分の特徴であるしなやかさ、美しさみたいなものの磨き方みたいなことを広島公演の直前くらいから練習し始めているけど、それがやっと今回はまとまってくれたなっていう感覚です。なので、これからまたどんどん変わっていけるんだなという感触が、実感として今はあります」
心も体も頭脳もすべてしぼり尽くすようにしてつくり上げた羽生結弦のアイスストーリー。羽生はさらなる進化を、見ている人たちに約束してくれた。
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著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。
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