フィギュアスケート全日本で鍵山優真が新時代の扉を開く「おもしろい試合になる」 (3ページ目)
【負けてられないと切り替えた気持ち】
昨年12月、長野での全日本は、フリーでどんどん順位が更新されていく戦いで白熱した。今年も、近い展開になる公算が大きい。切磋琢磨の中で真価を発揮した選手が、表彰台の一番高いところに立つはずだ。
「(総合優勝もフリーでは5位だった)フィンランド大会後は、メンタルが死んでいました。でも自分がずっと落ち込んでいても、他の選手は1分1秒、練習頑張っているんだなって。その差で結果が変わってきてしまう。負けていられないなって切り替えて、(全日本まで)前向きに来られていると思います」
前日練習のリンクサイド、全日本特有のひりつくような空気があったという。それぞれ集中し、決意に満ちた表情があった。独特の空気感は、鍵山を強く刺激した。
「全日本ならでは、という空気でした。それを不安と捉えず、楽しんでいけたらいいなって思います。(今シーズンは)気持ちの面で、緊張や不安を抱えてやることが多かったので、強い気持ちで"絶対に勝つ!"って」
全日本初優勝に向けて、鍵山は虎視眈々だ。カロリーナ・コストナーコーチのアドバイスもあって、悪い時は悪いなりに滑れるようにもなった。準備に余念はない。
「今シーズンは、やりたい演技がなかなかできないので......なんでだろうって考えた時、やっぱり練習から(自分の演技を)信じていかないと、本番でも信じていられないって思いました。だから全日本では、1ミリたりとも弱いところを見せてはいけない。自分ならできる、という滑りを練習からつくれてきたと思います。フィギュアスケートって、結局は自分との戦いだと思っているんで、まずは自分に勝てるように落ち着いて!」
12月20日、ショートプログラム。鍵山は『The Sound Of Silence』で決戦に挑む。王者のライバルは己だけだ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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