伊藤みどりの「伝説のジャンプ」を継承する女子選手とは? 「元祖天才」が今シーズンの楽しみを語る (4ページ目)

  • 野口美恵●取材・文 text by Noguchi Yoshie

【五輪プレシーズンの世界選手権には3枠取れる選手を】

 昨季の世界選手権(モントリオール)は、坂本花織さんが優勝、千葉百音さんが7位、吉田陽菜さんが8位。3人で協力して取った「今季の3枠」ですね。そして今季の世界選手権(ボストン)は、五輪の枠取りがかかります。日本代表選びは、国際大会で結果を出せることを意識しながら選考するので、GPシリーズで海外のジャッジから評価されておくことが大切です。

 私の場合、アルベール五輪前年の世界選手権が4位だったことで、五輪の日本女子枠を2枠にしてしまい、五輪代表争いはとてもプレッシャーを感じました。狭き門を皆が競う空気感は、2枠と3枠では全然違います。

 印象的だったのは、スケートカナダ後の松生さんの「私もオリンピックに行きたかったんだな」という言葉。言葉にしていなくても、誰もが心の奥では五輪を狙っているもの。今の日本女子は全体のレベルが高く、ちょっとしたミスでも順位が入れ替わるので、来季の五輪に向けて緊張感ある戦いが続くでしょう。

 また五輪や世界選手権だけがすべてではない、ということも忘れてはなりません。どんなに頑張っても、行けるのは3人のみ。今は、アジア大会や四大陸選手権など国際大会がたくさんあります。それぞれの舞台で自分をアピールして、皆に見てもらえることをモチベーションに、より魅力的な選手に育っていってほしいと思います。

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【プロフィール】
伊藤みどり いとう・みどり 
1969年、愛知県生まれ。6歳からフィギュアスケートの競技会への参加を開始し、小学4年の時、全日本ジュニア選手権で優勝し、シニアの全日本選手権で3位。1985年の全日本選手権で初優勝し、以後8連覇。1988年カルガリー五輪で5位入賞。同年には女子選手として初めてトリプルアクセルを成功させる。1989年、世界選手権で日本人初の金メダルを獲得。1992年アルベールビル五輪で銀メダルを獲得後、プロスケーターに転向。その後、アマチュアに復帰し1996年の全日本選手権で9回目の優勝を果たしたのち引退。現在は指導や普及に努めながら、国際アダルト・フィギュアスケート選手権にも出場し部門別優勝も果たしている。

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