伊藤みどりの「伝説のジャンプ」を継承する女子選手とは? 「元祖天才」が今シーズンの楽しみを語る (2ページ目)
【陽菜さんのトリプルアクセルが大好き】
また、日本女子にトリプルアクセルジャンパーが増えてきているのはうれしいことです。なかでも注目しているのは、吉田陽菜さんのトリプルアクセルです。高さと幅と流れがあります。とくに、跳び出しが上手で、踏みきりながら下で回してしまうことがなく、ちゃんと踏みきってから、上がって、そのあと回る、というダイナミックで質の高い跳び方です。
勢いや高さがある分、タイミングが合わないと、着氷でオーバーターンや転倒も起きやすい。そのリスクもわかったうえで、守りに入らずに跳んでいるところが好きです。演技も魅力的で、来季に向けてさらに成長していくでしょう。
また渡辺倫果さんは、ショートで1本、フリーで2本のトリプルアクセルに挑戦すると宣言されて、頑張っていますね。やはり今は個性の時代なので、"私の戦い方はこれ"というものを定めることで、気持ちも強く持てますし、自分のスケートを確立している選手の魅力は大きいです。3本そろえるのは大変なことだと思いますが、それでも挑戦する価値を見出している、気持ちの強さがすばらしいと思います。
一方、樋口新葉さんは今季、まずはダブルアクセルで戦うというのを宣言されています。決意するまでは、すごく自問自答したことでしょう。周りから「あの子は、もう跳べないのかな」という目で見られる怖さは、本当によくわかります。
それでも封印するからには「ダブルアクセルでも私は勝てるんだ」ということに、自分を納得させなきゃいけないし、結果を出さなければならない。今季の新葉さんからは、その吹っきれた強さが感じられます。
それを早くも実証したのがGPシリーズ・スケートアメリカでの優勝です。3回転ルッツまでを確実に降りるだけでなく、身のこなしが何と言ってもうまいです。動作の一つひとつに無駄な動きがなく、全体の動きに流れがあるので、振り付けが取ってつけたようにならない。新葉さんはどこをとっても絵になります。新境地に注目しています。
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