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男子フィギュアスケートは「マリニン1強時代」 鍵山優真、宇野昌磨に打つ手はあるか? (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【「マリニン1強」を許さない戦い】

 自身の演技終了直後には苦笑いを浮かべていた宇野はこう話した。

「本当に僕らしいなと思いました。この大舞台ですばらしい演技をしたい思いはあったけど、そううまくいかないというのが過去の自分を振り返ってみても多かった。でも本当に、今日まですごく頑張ってこられてよかったです。今は、清々しい気持ちで一杯です」

 鍵山も前を向いていた。

「ショート、フリーとも全力で最後まで滑りきることができたかなと思いますし、点数自体も納得がいくものでした。結果について満足している部分はあるけど、それでもやっぱり、すごく悔しいという思いのほうが今は強い。

 今回はどう頑張っても金メダルには届かなかったと思うけど、ここから来シーズン、そして(2026年)ミラノ(・コルティナダンペッツォ)五輪までどう戦っていけばいいか、しっかりと計画を立てながら、頑張りたいなと思いました」

 ネイサン・チェン(アメリカ)の世界最高得点に1.54点まで迫るマリニンの得点は衝撃だった。

 しかも彼は4回転フリップを入れた4回転7本構成の可能性も持っていて、現在のルールなら絶対的な強さを誇りそうだ。だが、構成が高難度になればなるほど、体調や環境に左右されるリスクは高まる。とはいえ、追いかける日本勢としては、常に完璧な演技が求められる。

 次の戦いに向けて鍵山は「互いが100%出した時に勝てるというのはまず無理なので、地道な努力と練習が必要になってくる。まずは自分のできる技術をもっともっと増やし、スケーティングをもっともっと磨き、GOEをもっともっと稼いでいけるようなプログラムをつくり、来シーズンは1点でも2点でも追いつくことが目標かと思います」と話す。

 鍵山は以前、「自分はGOEを稼いでなんぼ」と話していたように、今回のフリーの4回転フリップでは基礎点が0.50点高いマリニンの4回転ルッツより0.12点高いGOE加点をもらっていた。

 他の要素も同じように質を高めていけば得点は伸ばせる。すでに跳べている4回転ループを入れた4回転5本構成への挑戦も必要だが、そのうえで羽生結弦が目指していたような、「ジャンプも表現のなかに含めたトータルパッケージ」としての完成度を高めていくことが課題になってくる。

 試合後は「納得している」と話し、今後の方向性については明らかにしなかった宇野も、再び追いかける立場として競技を続けるならば、鍵山と同じように4回転サルコウを入れた4回転5本構成は必須だろう。加えて、これまでも目指してきた表現面を含めた宇野らしいフィギュアスケートを完成させなくてはいけない。

「マリニン1強」を許さない戦いが、今後の男子フィギュアスケートでは必要不可欠になってくる。

著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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