「りくりゅうは一体感のレベルが違う!」高橋成美と『ツーオンアイス』逸茂エルクが語り合うペアの見どころ (3ページ目)

  • 山本夢子●取材・文 text by Yamamoto Yumeko

【6分間練習とキス&クライも必見】

ーーペア観戦の楽しみ方として、どういうところに注目していますか?

逸茂 現地で実際に見ている時は、直前の6分間練習から注目しています。ふたりでコミュニケーションをとりながら練習しているペアもいれば、ずっとひとりで滑っているペアもいて。関係性みたいなところがなんとなく読めるというか。そこで抱いた印象と演技がどうなってくるのかなというのはけっこう気になります。漫画家なので(笑)。あとはシンプルに、点数よりも技のすごさを純粋に楽しませてもらっています。

高橋 私は現役時代、6分間練習の時はひとりでガーッとちょこまかやるタイプで、パートナーが話しかけようとしても逃げたりしていたので、一度後ろから捕まえられたことがあります。そのままコーチのところに連れて行かれて「落ち着け」と言われて。だから6分間練習は本当に見ていて楽しいと思います。あとは、演技冒頭に組み込まれることが多いツイストリフト(※女性が空中で横回転する技)。この高さで順位が決まってくるくらいペアの実力がわかる技なので、詳しいことはわからなくてもツイストの高さを基準に実力を予想するのも楽しいと思います。演技が終わったあとに点数を待つキス&クライでのリアクションもチームの雰囲気がわかって楽しいですね。

逸茂 私も演技後の距離感はすごく面白いなと思っていました。ペアごとに全然違うので、キスクラでの構図を全部メモしていたりしていましたね。

ーーペアのキス&クライのリアクションで忘れられないのは、やっぱり高橋さんがマーヴィン・トランさんと2012年世界選手権で銅メダル(日本ペア史上初の世界選手権メダル)を決めた時です。

高橋 私も忘れられないです。あの時はショートプログラムが3位だったんですけど、コーチから「すぐに調子に乗るから3位は今日でおしまい。明日(のフリー)は絶対無理だから3位を目指すのはやめなさい」と言われて。コーチの意図としては守りに入らないように、ということでした。それもあって、フリーの演技後は絶対に3位じゃないと思っていたのに3位に入っていたから、すごくうれしい感情と、コーチに対して言葉は悪いですけど「それ見たことか! なるたちをわかってないね!」みたいな(笑)。いろんな言葉や感情が一気に噴き出していました。

ーー日本ペアの歴史的快挙の瞬間でした。では最後に、ペア競技の魅力をお願いします。

逸茂 (漫画の取材で)これまでお話を聞かせていただいた高橋さんや(元ペア選手の)柴田嶺さんのように、ペアの選手ってすごく相手の立場を考えて行動されているんですね。日常でそこまで相手を思って何かできることってあまりないですし、相手のことを考えることが(危険を伴う競技でもあるので)大事になってくる競技なんだな、と。私がペアで魅力だなと思うのはそういう人間的な部分、人柄につながってくるような思いやりのような部分が演技でも見られるといいなと思いながら観戦しています。

高橋 ペアはアクロバティックでサーカスティックな「3Dでスケートをしている!」というような演技が私はすごく好きなんです。全身を使って横にも縦にもダイナミックに跳んだり、デススパイラルという技では氷スレスレを回ったり。そういうところがやっていても、見ていてもすごく好きなところ。ぜひ見てほしいです!

前編<週刊少年ジャンプ『ツーオンアイス』を高橋成美は「現役時代に読みたかった」ペアの葛藤を描いた逸茂エルクの思い>を読む

プロフィール

  • 山本夢子

    山本夢子 (やまもと・ゆめこ)

    スポーツライター。青森県八戸市出身。5歳からフィギュアスケートを習い始め、高校卒業まで選手として各大会に参加。その後、渡米し大学を卒業、就職。帰国後は、コピーライターとして広告制作に携わる。2005年からフリーランス。現在はライターとしてフィギュアスケートの専門誌を中心に執筆中。

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