羽生結弦が『RE_PRAY』に込めた問いかけ「人生が繰り返されるなら何を選んで何を感じる?」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【これまでのアイスショートとは全然違う】

 まず、プロローグと言えるような静けさを感じさせる『いつか終わる夢』(『ファイナルファンタジーX』)を滑る。そのあと、般若心経で始まる椎名林檎の『鶏と蛇と豚』とともにゲームの世界が展開されていく。大型スクリーンに映し出されたのは、モノローグの映像とゲームのリプレイだった。

 第1部最後の戦いは、ファイナルファンタジーⅨの『破滅への使者』。「プログラム全体を『ラスボス』というイメージでやっていて。最後、戦いきってやっと倒せた、全部使いきったという感じ」と説明する。

 このプログラムでは、最初に4回転サルコウを軽々と跳び、続いてトリプルアクセル+2回転トーループ。そして、3回転ループを跳んだあとにはフライングコンビネーションスピンを滑り、ステップシークエンスから4回転トーループを2本。トリプルアクセル+1オイラー+3回転サルコウに、そして、「繰り返す」イメージでオイラーから3回転サルコウをさらに続け、最後はチェンジフットコンビネーションスピンで締めた。

 それらの演技は氷上の照明をすべて点灯した大会の6分間練習のような雰囲気から続けられた。その6分間は、日常の練習の情景のような雰囲気も感じさせるものだった。

 羽生は、「6分間練習をして試合形式みたいなことをやりたいと思っていたんですけど、試合に近いプログラムにするにあたって、6分間練習も作品の一部であってほしいというのが強くあって。だから6練だけどちゃんと曲にも合って、それ自体もダンジョンというかボス戦というか、ひとつのステージみたいなものを演出としてつくったつもりです」と話す。

 勝利でその戦いをクリアした第2部。リプレイを拒否したことで暗闇のなかに落ち込む。何も見えず、誰が近くにいるのかもまったくわからない世界。『天と地のレクイエム』と『あの夏へ』(『千と千尋の神隠し』)を踊るなかで、それが何からも束縛されない自由だと気がつく。そして、「PLAY」が「PRAY」(祈り)に変わるストーリー。

「これまでやってきたアイスショーとは全然違って、一つひとつのプログラムだけじゃなくて、ひとつの作品のなかにいろんなプログラムがある。もちろん、今までやってきたプログラムたちも入っているけど、物語のなかに入った時にまったく違う見え方があるよねって。そういったことをひとつの流れで見せることが今回の趣旨なので、自分としては全然違った心意気でこのアイスストーリーというものに挑んでいます」

 今年2月の『GIFT』の時は、大きな流れのなかに入れたプログラムでそれぞれが持つ輝きを見せることを意識した。今回は大きなテーマに合わせ、前半は新プログラムも多く演じた。

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