日本のアイスショーのパイオニアがプロ活動に終止符。「50歳になろうかという人間がコスチュームを着て人前で演技をするのはたやすいことではない」 (4ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha

「フィギュアスケートの一番いいところである、スポーツでありながら芸術であるという、そのバランスがうまく取れたものをお見せしたい。特にこの時代、アマチュアの世界はテクニック的にすごくレベルが高いので、競技会ではリスクのあるジャンプや点を取るために必要なステップやスピンを入れて、ということになりますけど、フィギュアスケートで一番見てもらいたいのは、スピード感を出しながらスーッとカーブを滑るということです。そういうスケーティングを競技会ではやれないんですよ、点数にならないから。

 私は一番フィギュアスケートでいいなというところを見せられる場所がアイスショーだと思うので、もちろんジャンプも跳んでもらいたいんですが、フィギュアスケートならではの美を見せられればいいなと思っています」

 そう遠くない日に、有香さん演出の美しいスケーティングがメインとなるアイスショーが見られることを楽しみに待ちたい。
(つづく)

【プロフィール】
佐藤有香(さとう・ゆか)
1973年東京都生まれ。フィギュアスケート選手で種目は女子シングル。フィギュアスケートのコーチをしていた佐藤信夫、久美子夫妻の間に生まれ、趣味でスケートを始める。ジュニアの頃から実績を残し、1994年のリレハンメルオリンピックでは5位入賞、同年の世界選手権では優勝し、伊藤みどり以来、日本人二人目の世界女王となった。その後、プロに転向し、主としてアメリカを舞台に活動。日本国内外の選手のコーチや振付師として活躍中。2022年10月、プロスケーターとしての活動終了を発表した。

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