宇野昌磨「これまで練習してきたのと違う感じだった」。全日本フィギュアSP独走の裏側にあった違和感 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【光ったのは演技前・演技中の調整力】

 SPの演技前にリンクサイドに現れた宇野は、やや気負っていた。朝の公式練習も、6分間練習も、やや調子を落としていたのが影響していたのだろう。

 それを見透かしたステファン・ランビエルコーチに熱っぽく声をかけられると、彼は言葉ではなく、両手でサムアップをつくり「OKだよ」と答えていた。

「6分間練習を滑って、これまで練習してきたのと違う感じでした」

 宇野は心中をそう明かしている。

「でも焦るのではなくて、今どうすべきかを考えて、自分をコントロールできたと思います。スピードを出しすぎず、ゆっくり丁寧に滑ろうって。ジャンプの失敗は飛ぶ前に力が入っていたのが理由だったので。たぶん、ここはスピードが出ないリンクで、無理にスピード出そうとすると失敗するなって」

 短時間で機転を利かし、命取りになるような誤差を修正していた。

 冒頭の4回転フリップ、基礎点が11点と難易度の高いジャンプに出来ばえ(GOE)点3.14点もプラスし、完璧に降りている。

 2つ目に予定していた4回転+3回転連続トーループも、1本目の着氷で、2本目は無難に2回転にした。ダメージを最小限にしながら、着実にスコアを上積みした。3つ目のトリプルアクセルも盤石だった。

 演技中の調整力こそ、世界王者の懐の深さだろう。

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