坂本花織「人が変わったかのように新しい風が吹いた」。全日本選手権SPで首位発進、 不振をどのように乗り越えたのか (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【14歳の島田麻央、全日本選手権デビュー】

 いつもどおり、周囲への感謝を忘れなかった三原。地元関西での「凱旋」となる全日本は格別の思いを秘めて臨んでいる。逆転優勝も視界に捉える絶好のチャンスだが、「順位は気にしない」と平静さを見せつつ、気合いの入った顔つきは隠せなかった。

「フリーでは、今日(のSP)とはガラッと違った雰囲気で、強い女性の真っ赤な演技をしたいなと思っています。今シーズンいままで滑ってきた試合のなかでも、最高なフリーをしたいなと思っているので、しっかりケアをしてコンディションを整えて臨めるようにしたいなと思っています。そして試合では、思いきって悔いなく終えることができるようなプログラムにしたいです」

 この日のSPでは、トップシニア勢に負けず劣らず、可憐な演技で魅せたジュニア勢が躍進した。17歳の千葉百音が71.06点の3位となり、4位には70.28点で14歳の島田麻央が食い込んだ。なかでも先日のジュニアGPファイナルで初優勝した島田は、今年の全日本ジュニア選手権を制し、推薦出場で全日本初出場となった逸材。全日本デビューとなった次世代の有望株は試合後、初々しい小さな声でこう振り返った。

「緊張したなかでもいい演技ができ、いい得点をいただけたことはすごく嬉しいです。絶対やりきる気持ちがありました。少し緊張してスピード感はあまり出せなかったかなと思いましたけど、緊張したなかでまとめることができたのはよかったかなと思います」

 SPでは『ライオンキング』の壮大な曲に乗って、キレのあるジャンプと軽快な動きで華やいだ演技を見せた。冒頭の3回転フリップを決めるなど全てのジャンプでGOE加点がつき、ポジションが美しい得意の高速スピンで観客から大きな拍手をもらうなど、会心のノーミス演技だった。出場した29選手中、技術点の41.21点は全体トップ。ISU非公認ながら、自己ベストの71.49点に迫る得点を出した。

「最後のポーズを取るまで緊張していましたが、この大きな舞台でショートが70点を超えたことは自分でもいい手応えになったかなと思います」

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