坂本花織「人が変わったかのように新しい風が吹いた」。全日本選手権SPで首位発進、 不振をどのように乗り越えたのか (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【復活したチャレンジャー精神】

「今日は最後まで集中力を切らさずにできたので、久しぶりにいい試合だったなという感じでした。ジャンプも思いきり、跳び上がる踏み込みがこの1週間できるようになっていたので、それで勢いよく跳ぶことができたんじゃないかなと思います。走り込みを2日やったあとくらいには心肺機能的に余裕が出てきて、呼吸が落ち着いていると脚がしんどくても落ち着いてできる。それが日に日によくなってきていたので、だんだん不安がなくなって試合でできたのかなと思います」

 世界女王として臨んだ今季は、知らず知らずのうちに自分にプレッシャーをかけていたが、ここまでの戦いやGPファイナルでの敗戦に、チャレンジャー精神が復活したようだ。

「ファイナルから帰ってきて、早く全日本がしたいみたいな感じで、試合に対して意欲的になっていた。昨年の大会みたいな前向きな自分になっていて、人が変わったというか、今までの自分に戻れたなという感覚で、試合が楽しみな気持ちもよみがえってきたので、練習も楽しかったです(笑)」

 24日のフリーに向けては、プログラム後半でのジャンプミスが目立っていた課題をクリアして、ジャンプをしっかり決めることを目標に掲げ、自分の本来のスケートを取り戻すと意気込む。そして「やるで! やる気満々やで!」と、力強く宣言した。
 
 その坂本を追うのは、同門の先輩で12月のGPファイナル女王の三原舞依。首位とは3.09点差の74.70点で2位につけた。SP『戦場のメリークリスマス』の厳かな旋律に乗った優美な演技で観客を魅了。冒頭のダブルアクセルを鮮やかに決めると、3回転フリップ、ルッツ+トーループの連続3回転ジャンプも成功させて、全てのジャンプでGOE加点がついた。3つのスピンとステップはすべてレベル4判定となり、ノーミス演技でガッツポーズも飛び出した会心の出来だった。

「最初の音が鳴ってから、今までの人生をしっかりと込めて、最後の最後まで意識したいところをひとつひとつ振り返って考えて滑れたので、すごくよかったなと思います。全日本のショートを最後の音まで滑りきることができたのは、先生方、家族、友達、会場に来てくださったお客様がいなかったらここまで来られていないので、感謝の気持ちでいっぱいです」

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