宇野昌磨、NHK杯優勝の裏側にあった誤算も「運がよかった...」。GPファイナルへ向け目指す自分に近づけるか (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 3本目の4回転フリップが2回転になったのは、自身では織り込み済みだった。最初は「どうせ跳べない」と思い、4回転フリップを最後の7本目にして、3本目には4回転トーループをしっかり跳ぼうと考えていた。だが、最初の4回転ループと4回転サルコウを跳べたことで、練習どおりにやろうと考えを変えた。

「直前にエッジを動かしたので、まずはトーループが跳べるのか、アクセルが跳べるのか、自分の感覚がどういうものかと考えていた。本来なら何日かかけて調整していくものなので、どうなるかわからないというなかでしっかり踏みきって降りられるかを最初の4回転トーループで確認しました。

 それで『あっ、大丈夫だ』と思ったので、次の4回転トーループには『ダブルでいいから』と2回転トーループをつけてコンビネーションにしました。最後のトリプルアクセルは本当に余裕があったら3連続にしようと思ったけど、不確定要素を取り入れたなかだったから、ちょっとでも安心できるジャンプにしようとシングルにしました」

 納得できない状態を考慮したなかで、自身でしっかりと考えて体現した演技。いつもの宇野らしい曲に身を任せるような流れのある滑りだったが、「今日はジャンプ以外のことは全然考えてなかった。なのでプログラムをつくってくれた宮本賢二先生には申し訳ない演技をしたと思いつつも、優勝につながる演技ができたと思います」と振り返った。

納得できなくても今できるベストを

 この苦しい戦いで得たものは、宇野にとって大きかった。

「今日まではいい練習ができてこなかったと言いましたが、それでも納得しなくても毎日自分ができる範囲で練習をしてきたことは事実なので。今回の演技内容にもそれが表れていたと思うし、今できるベストは出せたかなと思います」

 かつてコーチ不在で苦しんだ時の「自分がどこまで落ちてしまうかわからない状態」とは違い、今回の279.76点は、現時点の自分の最低限と言える、ベースラインの得点でもあることも確認できた。

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