三原舞依「予定が詰まっているほうが元気でいられる」。唯一無二の演技へ連戦で誓う成長 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Kyodo News

「全部、次に活かせるように」

 翌日のフリースケーティングも、三原はスペインのバレエ曲『恋は魔術師』に向き合い、迫ろうとしていた。真紅のドレスに黒い飾りが輝く衣装をまとい、スタートポジションから激情の世界に入る。

 ダブルアクセル+3回転トーループ、3回転ルッツは安定していた。3回転サルコウは着氷が乱れたが、3回転フリップは成功。スピンの速さ、力強さは確実に増し、レベル4を獲得。後半はやや消耗が見え、最後のループは2回転になったが......。

「まだペース配分がまだ決めきれていなくて。全部を上げて上げて、だと最後は体力がなくなってしまうので。緩急をつけて、強いところ、優しくするところって音楽に合わせながらと思っています」

 目を奪ったのは、フラメンコのパソを入れた華麗なステップからの雄大なコレオだった。ロングスパイラルは美しく、GOEは2点。これから全体が仕上がってくると、壮大なプログラムになる予感があった。

「『げんさん(サマーカップ)』が終わって、フリーのステップ、コレオは重点的に練習してきました。ステップは力強く入って、コレオでガァーって盛り上がるように。そこは練習の成果が出たかなって思います。ロングスパイラルのところは、(振付師の)デヴィッド(・ウィルソン)さんにも見せたら、『入れよう!』ってなって。壁ギリギリまでぶつからないように、リンクを広くカバーして、スピード感とダイナミックさを最後まで出しきれたらと思っています」

 フリーのスコアは129.64点だった。現時点では上出来の点数だが、彼女には視線の先がある。

「まだまだ足りないところはあるので、試合ごとに成長したいと思っています」

 三原は言う。

「近畿、西日本、グランプリ(GP)シリーズのイギリス、フィンランドと続けて試合があるんですが、予定が詰まっているほうが、元気でいられるかなって考えて。コンスタントに試合に出られるなか、そこで出た反省点を活かしていければと思っています。それで、(6人だけが出られる)GPファイナル、全日本まで一歩ずつ前へ進めたら」

 曲の世界観を余すところなく表現できたら、勝負の小さなもの差しなど超越し、彼女の舞台は唯一無二となるだろう。

「もう10月というのが信じられなくて。シーズンはどんどん進んでいくので、しっかりやりたいです。修正しないといけないし、まだまだできることはたくさんあると思うので。全部、次に活かせるように!」

 三原は表彰を受けたあと、そう言って自らを叱咤した。その甘えない姿勢が、彼女の世界を彩る。

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