鍵山優真が高得点を挙げられる理由。すべての要素が、教科書に載せられるような基本に忠実な滑りにあった (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直/JMPA●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

【本番でも持ち味をいかんなく発揮】

 若さと勢いに乗ってはつらつとした演技と、基本に忠実な美しいジャンプは誰もが見入ってしまうほど。軸がしっかりしたスピンでは、男子としてはまれな美しいポジションが取れる稀有なスケーターだ。「武器はこれ」と言うよりも、ジャンプを跳んでスピンを回ってステップを踏むという、そのすべてが教科書に載せられるような滑りになっていることが持ち味であり、出来栄え点(GOE)で高得点を稼ぐ要因だろう。

 五輪本番でもそれはいかんなく発揮された。

 フリーで冒頭の4回転サルコーはキレキレのジャンプでGOE加点を4.43点も稼ぎ、4回転トーループではGOEで3.80点がついた。一方、今大会で初めて試合に投入した4回転ループは、4分の1回転が足りないq判定がつき、着氷も乱れて片手を氷上につく失敗で、GOEで4.65点のマイナスだった。また、4回転トーループからの3連続ジャンプでは、最後のジャンプが3回転から2回転になってしまったが、最後のスピンまで気合のこもった演技を全力でやり遂げた。

 演技後は少し顔をゆがめて、しばし氷上に突っ伏したが、それほど持てる力を出しきった演技だったのだろう。

「(演技直後の状態は?)疲れました。全力でというふうに考えていたので、最後まで何があっても諦めない滑りを見せることができたらいいなと思っていた。それができてよかったのと、オリンピックの舞台でひとつの悔いも残したくないという気持ちで思いきり滑ることができてよかったです。

 今日(のフリー)は、団体戦、SPと違って緊張しました。この演技ですべてが決まる、試合が終わってしまうと考えると、やっぱり緊張してしまいました。緊張があったなかでも楽しい気持ちを忘れずにいられることができたので、自分を保てて平常心でいられたかなと思います」

 フリーでの自己ベスト更新はならずに201.93点だったが、合計では18.28点の大幅更新となる自己最高得点の合計310.05点をマークしての銀メダルだった。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る