宇野昌磨が平昌五輪後の苦しみから得たもの。北京五輪で成長の総決算を見せられるか
北京五輪、団体戦・男子SPに出場した宇野昌磨この記事に関連する写真を見る 北京五輪、フィギュアスケート団体戦。男子ショートプログラム(SP)、宇野昌磨は赤と黒の衣装で登場した。『オーボエ協奏曲』で105.46点とパーソナルベストスコアを記録。アメリカの世界王者、ネイサン・チェンに次いで2位につけた。
4回転フリップ、4回転トーループ+3回転トーループ、トリプルアクセルとすべてのジャンプで高いGOE(出来ばえ点)を稼いで着氷。スケーティングは静謐(せいひつ)で曇りがなかった。本人が「重かった」と振り返ったようにスピン、ステップとレベルを落としたところはあったが、見事に先陣を飾ったと言えるだろう。
「気持ちを切り分けることができた」
演技後、宇野はそう振り返っている。団体戦の一員としての責任、コンディションも含めた調整の難しさ、単純に失敗への恐れ、そしてひとりのスケーターとしての矜持。団体戦の1番手は個人とは異質の絡み合った重圧がのしかかるもので、上ずってしまうところもあるが、その心境は明るく澄みきっていた。落ち着き払い、地力の強さを見せたというのかーー。
【苦しみ抜き、取り戻した「楽しさ」】
その境地に達するには、長い日々の格闘が必要である。
北京五輪を前に、宇野昌磨は試練を迎えている。ステファン・ランビエルコーチがコロナの問題で、大会合流が遅れることになった。ふたりの師弟関係を考えれば、ポジティブなニュースではないだろう。
しかし、宇野は人間としても選手としても成熟してきた。
「スケートにうまく向き合うことができるようになりました。今までは、うまくなりたいという意欲ばかりが強すぎましたが」
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