「悔しいです」浅田真央がバンクーバー五輪で流した涙。それでもキム・ヨナとの戦いは見る者を虜にした (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

「ジャンプへ入る時はカクッて震えそうになったけれど、跳べると信じました」と言う浅田。トリプルアクセル成功後も気を抜かず、丁寧な演技を続けた。ただ、過度な緊張もあったのか、いつものような滑らかなスピード感はない。その代わりに、彼女のピンと張り詰めた気持ちを会場中に放射するような滑りだった。

 演技後半では徐々にスピードを取り戻した。「最初はすごく集中していたけど、最後のほうになってくるとだんだん五輪で自分が滑っているんだという喜びが出てきました」。そう話したように、表情も余裕と明るさを持って演技を締めくくった。

 すべての重圧から解放されきったような、安堵のほほえみを浮かべた浅田は、氷上で小躍りして完璧な演技ができた自分に称賛を送った。審判が出した得点は、自己ベストに2.06点及ばないだけの73.78点。彼女はその得点を、「ホント、ホント?」と何度も言いながら、確かめるように見つめていた。「自分では山場だと思っていたショートを、無事に滑りきれたことがすごくうれしかったんです」と素直に喜んだ。

【ハイレベルなふたりの演技】

 一瞬の静寂が再び戻ったリンクでは、キム・ヨナの演技が始まっていた。浅田に勝るとも劣らない、じっくりと熟成された演技。彼女もまたミスなく舞いきり、自己最高を2点以上上回る78.50点の高得点を獲得した。

 そんなキム・ヨナの演技の感想を求められた浅田は、「彼女の演技は最初のジャンプしか見なかったけれど、パーフェクトだったんですごいなと思いました。またフリーでもお互いにベストを尽くせればいいと思います」と言った。4.72点という得点差について質問されると笑顔でこう答えた。

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