「ふたりにしか出せない世界観が出せるんじゃないかって」。四大陸選手権に出場へ、村元哉中&髙橋大輔の物語は続く (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 五輪選考基準は4つの項目で、①全日本選手権勝者、②世界ランキング、③今シーズン世界ランキング、④国際スケート連盟(ISU)最高得点だった。③、④はかなだいがリードし、小松原組と2対2になったが、最後は全日本の結果が考慮された。大会前に決まっていた明確な基準ではなかっただけに、不条理さを感じる人も少なくなく、物議をかもした。

 ただ、かなだいは前向きだった。

「世界選手権の枠取りという部分でも、2枠取って帰って来られたら、2023年の世界選手権では(小松原組と)一緒の場に立てるかもしれない。その意味でも僕たちは精一杯、頑張りたいです」

 五輪代表発表の翌日、髙橋は健闘を誓っていた。いささか人がよすぎるかもしれない。しかし、その真摯な人柄が躍進を生んだ、とも言える。

【ふたりにしか出せない世界観】

 2021−2022シーズン、かなだいはNHK杯、ワルシャワ杯で立て続けに日本選手1位になっている。しかも、歴代得点記録を鮮やかに更新した。アイスダンサーとしては時間の足りなさが明白だったが、「100%以上を出すしかない」という覚悟で、瞠目(どうもく)に値する結果を出した。北京五輪出場は大きな目標だったはずだが、すべてではない。四大陸選手権、世界選手権の出場選手として選出されたのは快挙で、そう考えたら勝ち取ったもののほうが大きかった。

 髙橋に至っては、シングルから転向して2年目である。2010年バンクーバー五輪で男子初のメダルを勝ち取り、同年の世界選手権では優勝。2018年には4年ぶりの復帰で全日本2位になり、まるで別の競技と対峙した。尋常ではない熱意で肉体改造から挑み、エッジワークをあらためて磨き、調和を高め、抜群の音感覚で物語を表現するまでになった。そしてアイスダンスという人気面で発展途上だった競技に、革命的変化も与えた。

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