羽生結弦、自身の「成長を感じる」。生き生きとした狙いどおりの演技 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 高橋 学●写真 photo by Takahashi Manabu

SP演技を終え、ピースサインで笑顔を見せる羽生SP演技を終え、ピースサインで笑顔を見せる羽生「自分ではあまり聞く気はなかったけど、アナウンスが日本語なので宇野(昌磨)選手の点数があまりよくなかったのも聞こえてきたので緊張しました。ただ、彼はミスがあったけれど、彼の力とか魂とか、そういうものを受け取りながら自分も頑張れたと思います。この試合に貢献するためには、自分の演技にしっかり入り込んで、自分のペースでいることだと思っていました。今回は本当に最後の最後まで、宇野選手とともに外からの力を借りて滑らせていただいたと感じています」

 演技が終わった後の羽生は表情を何回か変えた。すべての観客が着氷で驚き、耐えきった瞬間には安堵のため息を漏らした3Aのミスが、複雑な思いとなって湧き出てきたからだろう。

 それでも羽生は「チーム競技というのではなく、自分の演技だけに限定すれば」と前置きしたうえで、「(大会の)このプログラム(『レット・ミー・エンターテイン・ユー』)で初めて4回転サルコウ、4回転トーループ+回3転トーループをきれいに跳ぶことができたので、成長しているなと思えています」と話した。

 この日の演技を振り返れば、プログラム自体の完成度は高かったと言える。力ではなく、羽生の高い技術力で跳んだ前半の2本のジャンプ、つなぎの滑り、スピンは余裕ある冷静な表現の滑りになっていた。それは、昨年12月の全日本選手権後に語っていたものだ。

「ロビー・ウイリアムズさんの『レット・ミー・エンターテイン・ユー』はイギリスのロックで、(自分の滑りより)もっと余裕のある曲だと思います。それがまだ表現できていなかったので、もっとスマートなものにしたいです」

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