逆境を乗り越えた宇野昌磨のスケートの本質。期待したい笑顔の行方 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA/Enomoto Asami

「試合ごとに成長したい」と語る宇野「試合ごとに成長したい」と語る宇野 宇野は、いわゆる絵になる選手と言える。滑る姿が、記憶に焼き付けられるのだ。

 2018年の全日本選手権、宇野は大会中に右足首をくじいて万全ではなかった。安静が必要な状況で、フリースケーティングの演技を周りから止められていた。しかし、本人はその事情を口に出さず、敢然と演技に挑んだ。

「これが、僕の生き方ですから」

 結果、心を震わせるようなスケーティングで、劇的な優勝を遂げた。

 2019年の全日本は、大会直前までコーチ不在で不調が続いていた。どん底まで落ちたと言えるだろう。しかしステファン・ランビエールコーチの後押しを受け、スケートの楽しさを取り戻すと、生まれ変わったように羽ばたく。無垢なるがゆえの演技だった。思わず笑みがこぼれる滑りで、華々しく頂点に立っている。堂々、4連覇の達成だ。

「どん底を経験したからこそ、いつもと違う考えを持てるようにもなりました。練習から、楽しくできるようになって。できたから楽しい、じゃなくて。跳べなくても、笑っていられるようになりました」

 大会後、宇野は明るい声で話していた。

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