全日本で「輝いた」スケーター。「ラストダンス」にまつわる3人の物語 (3ページ目)
「全日本は8度目で、初めて最終グループで滑ることになりました。普段の練習から試合のつもりで挑んでいたので、最終グループ独特の緊張は感じず、いつもどおり滑ることができました」
そう語る新田谷はショートプログラム(SP)で5位、フリーで11位、トータル10位だった。しかし、順位以上に、人を惹きつける引力が増していた。
「大学を卒業しても現役を続けるということで、去年以上の覚悟はできました。家族やコーチからも、『続けられてよかったね』と言ってもらえるようにと。氷の上での練習はもちろん、体力トレーニングや体重管理も積極的に取り組むようになって、ジャンプや演技構成点に結果として出てきたかなと思います。ただ、全日本は他の選手もレベルが上がっているので、ミスをしないのは最低限。プログラムの質を上げ、練習から100発100中でいけるように」
そして引退を撤回した新田谷は、こう続けた。
「卒業したらやめなきゃいけないわけじゃないと思います。自分の人生の中で、今が体力的にも気持ちの面でも一番スケートに向かっていて。引退するか迷っている後輩の選手がいたら、『続けたらいいことあるかもよ』って伝えられる選手になりたいです」
彼女は「ラストダンス」を一度、封印した。
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