羽生結弦が全日本選手権で見せたプログラムへのこだわり (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 高難度ジャンプを跳んだとしても、それをただ跳ぶだけではなく、ジャンプ自体が表現の中に組み込まれたものにしてプログラムを完成させたい。そんな思いがあるからこそのこだわりだ。

 さらに羽生にしてみれば、基礎点が1.1倍になる最後のジャンプは高得点を稼げる連続ジャンプにしたいという強いこだわりもある。また今後は、それぞれのジャンプの安定度を見ながら、冒頭のジャンプを4回転ルッツや4回転ループに変える可能性もある。そんな先への上積みも十分にあるなかでの、自己最高得点だった。

 そんな羽生に次いで2位につけたのは、今季初めてノビノビと、そしてしっかり体の芯に力が入った滑りでノーミスの演技をした宇野昌磨だった。その得点は首位と5.01点差の105.71点。得点差を見れば緊迫した戦いではある。

 それでも羽生の表情には過度の緊張感はなかった。疲労も限界近くまで溜まっている状態で、4年ぶりの全日本制覇へ向けて力みもなく、一歩を踏み出した。

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