羽生結弦は冷静に、勝つべくして勝った。
番記者が見た五輪V2の裏側
2連覇を達成したあとも、冷静に自身の滑りについて語った羽生結弦 平昌五輪で男子フィギュアスケート66年ぶりの連覇を果たした羽生結弦。間近で見ていて印象的だったのは極めて冷静な姿だ。メダルセレモニーのあと、彼はソチ五輪との違いをこう話した。
「やっぱり4年分積み上げたものがあるかなと思いますね。ソチの時のガムシャラさとはまた違って、何か今回は本当に獲らなきゃいけないというような使命感もあったし、『これを逃したら』という気持ちも少なからずあったし......。19歳の時はもっと時間があると思っていたんですけど、やっぱり今回の五輪は『もう時間がない。もうあと何回あるかわからない』という緊張感もあったので、ある意味、五輪を感じられたのかなとも感じます」
昨年11月のNHK杯で負った右足首のケガは思ったよりもひどかったという。NHK杯の時も痛み止めを打ってでも出ようと思っていたが、痛みどころか足首が動かなくなってしまっていた。そこからはもう開き直るしかなかった。痛めた靱帯(じんたい)だけではなく、他の部分の痛みも出ている状態。練習ができない時期には筋肉解剖学の論文を読んだり、トレーニング方法やそのプラニングも学び、今の自分にできることは何かを考えた。
やっと氷上練習ができるようになったのは2カ月後の今年1月で、トリプルアクセルが跳べるようになったのは江陵(カンヌン)入りした2月11日の3週間前。4回転ジャンプが跳べるようになったのはその後というから驚きだ。痛みがまったく引かず、痛み止めを服用してもルッツとループの踏み切りでは痛みが出ていた。4回転ループを跳べたのは韓国へ移動する前日で、3回転ルッツも五輪のギリギリで跳べるようになった状態だった。
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