髙橋大輔のサポート経験がサニブラウンへの「食」指導に生きている (2ページ目)

  • 川喜田研●構成 text by Kawakita Ken

 ちなみに、ひと言で「食事指導」と言っても、合宿や練習などに帯同して実際に食事を作る仕事から、食生活の大まかな方向性をアドバイスする仕事まで、いろいろな形があるのですが、髙橋選手の場合はその5シーズン、日々の食事のほとんどをサポートするという、私にとっても前例のない取り組みだったので、そこからは多くの経験と学びがありました。

 日々の試合や練習に密着したサポートになりますから、競技やトレーニングの違いではなく「いつ、どんな状況で食べるものか」といったことにも気を使いました。たとえば、フィギュアスケートの場合、オリンピックメダリストの髙橋選手でもスケートリンク確保は簡単ではないので、どうしても夜、遅い時間の練習が多くなりがちです。

 当然、練習の後にはお腹が空きますが、翌日の体調維持のためには睡眠も大切なので、早めに寝なくてはいけない。ところが、ただでさえ練習直後はアドレナリンが出ていて眠りづらいし、しかも、寝る前ですからあまりたくさんの量は食べられない......。これは、大学の授業が終わって遅い時間帯に練習する学生の競泳選手などにも共通する悩みです。

 そんな時、少量でいろいろな栄養素が摂れて、エネルギーもあって、ちょっと楽しい感じのモノ......と、いう事で、髙橋選手が気に入って食べてくれたのが豚肉のスープとウーロン茶で炊いた「中華風の五目おこわ」。もち米に肉や大豆、ナッツ類、人参なんかも入れて炊いたおこわは、見た目にも楽しくて、遅い時間にちょっと食べて気分も落ち着きます。
 
 あと、髙橋選手はクリームシチューやハンバーグが大好物なんですが、人間は「栄養」だけで生きているわけじゃないので、やっぱり「好きなモノを食べる」っていう気持ちの部分も大切なんです。そこで、クリームシチューだったら野菜は油で炒めず、市販のルーの代わりに牛乳と裏ごしした野菜などでとろみを出すように工夫しました。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る