「大事なのは......」。鈴木明子から浅田真央へのメッセージ (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro 笹井孝祐●撮影 photo by Sasai Kosuke

──日常生活で、どうしてもうまくいかないことや、どうしても気分がのらないときがあります。そんなときはどうすればいいでしょう?

鈴木 生きていれば、うまくいかないことも、前に進めないときもあります。一生懸命にがんばっている人ほど、つらい思いをするかもしれません。そんなときには、小さなことでいいので感謝してください。「ありがとう」と思うことで気持ちが変わるからです。本当に小さなことでいいんです。

 つらいときに大切なのは、笑うことです。笑顔で誰かに接すれば、きっと笑顔が返ってきます。つらいときに笑うことなどできないならば、微笑むだけでもいい。それが無理なら、元気よくあいさつをする。それだけで何かが変わります。

──本の中で、摂食障害で苦しんだ時期について書かれています。

鈴木 はい。大学に入学した直後に体調を崩して、48キロあった体重が32キロまで減ってしまいました。食事が満足にとれなくなる「摂食障害」でした。スケートはもちろん、歩くことも食べることもできません。体力が落ちているので、ぐっすり眠ることも難しい。18歳のとき、いまから11年前のことです。

──その頃、将来、オリンピックに2度も出られるなんて思っていましたか?

鈴木 まったく想像もできませんでした。未来から誰かがやってきて「鈴木明子は2回もオリンピックに出るんだよ」と教えてくれたとしても、信じる人はいなかったでしょう。私自身もそうです。立っているのがやっとという状態でしたから。母には「本当に幽霊みたいだった……」と言われます。そこから立ち直れたのは、ご飯も満足に食べられない私を母が受け入れてくれたから。滑ることもできない私を長久保裕コーチがずっと見守ってくれたからです。

「摂食障害」を克服した私は、ひとつひとつ、少しずつ、階段をのぼっていきました。小学生の頃に簡単にこなせたことさえできなくなっていましたが、「元にもどる」んじゃなくて「進む」んだと考えるようになって、練習が楽しくなりました。

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