2014.04.25

「大事なのは……」。鈴木明子から浅田真央へのメッセージ

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro 笹井孝祐●撮影 photo by Sasai Kosuke

鈴木明子インタビュー 後編
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──浅田真央選手には、引退の噂もあります。髙橋大輔選手は1年間の休養を発表しました。現役を続けるか、引退するかを迷う選手に対してアドバイスはありますか?

引退後のキャリアについて語った鈴木明子鈴木 それぞれにスケートに対する思いがあって、すごく迷うと思います。そんな選手には、「今しかできないこと」は何かを考えてほしい。

 続けるか、やめるか──。最後は、本人の決断です。大事なのは本人の気持ちですから、答えを急かされるようなことがあってはいけない。まわりの人は、そっと見守ってあげてほしい。

 私はバンクーバー大会が終わってからも現役を続けましたが、「ソチを目指そう」と決めたのは、オリンピックの1年前でした。その間も「オリンピックを目指しますよね?」と何十回、何百回と聞かれましたが、「そうじゃないのになあ……」と思っていました。オリンピックは大きな大会ですが、それだけのために滑っているわけではありません。

──やめることはいつでもできますよね。

鈴木「すぐに結論を出さない」という選択肢があってもいいんじゃないでしょうか。これまでがんばってきた選手には、最後で後悔をしてほしくありません。じっくりじっくり考えてほしいですね。多くの人と出会って、いろんなものを見たときに、考えが変わるかもしれません。自分の気持ちに正直になって、自分自身に向き合って、「自分が何をしたいか」を徹底的に考えてほしい。

 私が「これでやめよう」と思えたのは、次にやりたいことが見つかり、自分のビジョンが見えてきたから。フィギュアスケート選手のほとんどは、スケートだけをずっと続けてきているわけですから、それをとったら全部がなくなってしまう。次の目標や夢が見つかったときに、それと競技への情熱を比べてみればいいと思います。

 私は、自分の将来を考えたときに、「今、がんばろう」と思いました。コーチたちからも、「自分のキャリアが次の世界につながるよ」と言われました。オリンピックに出ることもメダルをとることも、自分が今後やりたいことの可能性を広げてくれるもの。プロスケーターになるため、プロの振付師になるための、ある意味、「就活」ですよね。

 自分の未来は、「今をがんばること」でしか見えてこない。プロのスケーターになりたければ、ショーに呼んでもらえるスケーターにならなければならない。もしコーチになりたいなら、コーチをしてほしいと思われるような選手にならなければいけません。今後の活動を考えて、残りの選手生活で「これをやろう」と決めれば、より可能性は広がるでしょう。

 長く競技生活を続ければ続けるほど、情熱を注げば注ぐほど選手は、引退=人生の終わりと感じてしまうものですが、引退は人生の終わりではありません。「もっとやりたいこと」が見つかるまでは、競技を続けてもいいのではないでしょうか。