羽生の度胸、真央の涙。主将・鈴木明子が見た日本チーム

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro 笹井孝祐●撮影 photo by Sasai Kosuke

鈴木明子インタビュー 前編

 今年3月に埼玉で開催されたフィギュアスケート世界選手権を最後に、22年間の現役生活に別れを告げた鈴木明子さん。8位入賞となった2月の冬季五輪ソチ大会も含め、自らのスケーター人生を振り返ってくれた。

    鈴木 ソチオリンピックは「痛かった」という印象です。12月に痛めた足が悪化し、思うように滑れませんでした。スニーカーを履いていても、痛くて痛くて......。でも、コンディションが万全でない状態でも、すべてを出し切ることができました。

──初めて行なわれたフィギュアスケート団体戦で日本は5位、鈴木さんは個人で8位。バンクーバー大会に続いて2大会連続の入賞を果たしました。浅田真央選手は6位、村上佳菜子選手は12位でした。

鈴木 3人とも期待されたような成績は残せませんでした。初日のショートプログラムで成績が悪かったことはみんなわかっていましたが、特に言葉を交わすことはありませんでした。真央も佳菜も私より年下ですが、「誰かに頼ることはできない」「自分で戦うしかない」ということがちゃんとわかっている選手です。普段は3人とも仲がいいのですが、それぞれが自分の世界を持っていて、必要以上に踏み込むことはありません。ソチのときもそうでした。

 フリーで真央がすばらしい演技をしたことはコーチから聞きました。試合が終わったあとに3人が顔を合わせた瞬間、抱き合って号泣しました。もちろん、言葉はありません。あとで映像を見たら、真央は「やり切った」という表情をしていましたね。これまで、彼女が氷の上で泣くなんてことはありませんでした。本当によかったなと感じました。

──どうして3人は号泣したのでしょうか?

鈴木 やはり、3人全員が国を背負って精一杯に戦ったからでしょうね。本当に苦しかったけど、「がんばって、ここまで来れたね」という涙だったと思います。言葉はなくても、みんな、わかりあえた瞬間です。

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