ベテラン・髙橋大輔を突き動かす若きライバルたちの進化

  • 折山淑美●文・取材 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

日本人男子初となるGPファイナルでの優勝を飾った髙橋大輔日本人男子初となるGPファイナルでの優勝を飾った髙橋大輔 全出場選手6名中日本人選手が4名までを占めたGPファイナル男子シングルは、最後の最後まで緊迫感に満ちたシビアな戦いが繰り広げられた。

 7日のショートプログラム(SP)で先手を取ったのは第2滑走の髙橋大輔だった。冒頭に、SPでは今季初めての成功となる4回転トーループを決めて波に乗り、得意のステップでは、切れとスピードのある滑りでロシア人観客をどよめかせるほど。ノーミスで演技を終えたのだ。

 その会場の盛り上がりが、後に続く選手たちの緊張感を高めた。町田樹(たつき)はジャンプのミスを連発して後退。小塚崇彦は、4回転トーループはきれいに降りて終盤のステップなどもスケートが氷に吸いつくような重厚な滑りを見せたが、中盤のトリプルアクセルで転倒して髙橋に届かず。

 そして羽生結弦(ゆづる)は4回転トーループを決めて中盤のトリプルアクセルも余裕を持って跳びながらも、「公式練習の不安が出てしまった」と、続く3回転ルッツの着地でバランスが崩れた後に無理やり跳んだ3回転トーループで転倒してしまった。

 昨季世界選手権優勝のパトリック・チャン(カナダ)も4回転を跳び、スピードのある滑りを見せたが、スピードの出過ぎで3回転ルッツが2回転になるミスも。

 結局「順位は考えずに自分の力を出すことだけを考えていたのでビックリした」という髙橋が、チャンを3・02点抑えてトップに立ち、羽生が5・12点差、小塚が5・90点差で続くという展開になった。

「4回転は公式練習でもよくなかったし、直前の6分間練習でもベストではなかった。それでも降りられたというのは、調子が上がってきて動きと体がカチッと対応できているのかなと思う。でもSPの1位は予想していなかったので、明日はすごく緊張すると思います」

 こう話す髙橋に対して羽生は、「NHK杯の大輔さんと僕との7・85点差に比べたらすごく楽な心境。3位だがまだまだ挽回できる点差だと思う」と話して笑顔を見せた。

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