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【ボクシング】中谷潤人のマネージャーは2歳下の弟 「阿吽」の呼吸で兄を支え、一緒にモンスター超えを目指す (3ページ目)

  • 林壮一●取材・文・撮影 text & photo by Soichi Hayashi Sr.

 龍人との初対面の日、ジムワークが終わり、ロードワークに向かうまでの数時間を利用して、中谷兄弟と私は1999年6月26日に催されたWBAバンタム級タイトルマッチの映像を見た。互いに感想を述べ合いながら、私は「このWBAのベルトをいずれ腰に巻くことになるでしょう。その頃、潤人選手の足跡を1冊の本にまとめさせてもらえませんか?」と申し込んだ。それだけの熱量を感じさせる存在だったからだ。

 ふたりはその場で微笑み合い、即、GOサインを出してくれた。

 龍人は、当時を振り返りながら、拙著『超える 中谷潤人ドキュメント』の感想を述べた。

「WBAバンタム級タイトル戦のYouTubeを一緒に目にしたのは、サウスセントラルの一室でしたね。兄が渡米して、あそこでトレーニングを始めたのは、僕が中学2年の時です。旅立った日の前日に喧嘩をしたこともあって、僕は見送りに行かなかったんですよ。確か、学校もありましたし。この本で、当時の兄が過ごした場所の雰囲気や、現実を理解できました」

 昨年6月、中谷兄弟は、数々の名チャンピオンを生んだペンシルベニア州フィラデルフィアを旅した。当地で私は、30年近い付き合いである元世界ヘビー級チャンピオン、ティム・ウィザスプーンを彼らに紹介した。

フィラデルフィアでの1枚。後列の左が潤人、右が龍人。前列の左がティム、右が筆者フィラデルフィアでの1枚。後列の左が潤人、右が龍人。前列の左がティム、右が筆者この記事に関連する写真を見る

 ウィザスプーンは「龍人の発音が難しい」とこぼしながら、何度も「RYU―UU―TOでいいのか?」と訊いてきた。その度に我々は笑った。

 龍人は思い起こす。

「楽しかったですし、とても学びのある5日間でした。薬物中毒者が集まっていたエリアの光景は忘れられません。ティムさんは優しく、他者への思いやりがある方ですよね。フィラデルフィアではずっと兄を(周囲の人に)宣伝してくれて、貴重なアドバイスもいただきました。ぜひ、再会したいです」

 人の気持ちを察しながら周囲を敬い、「阿吽」の呼吸で兄をバックアップする中谷龍人。だからこそ、ウィザスプーンとも絆を築けたのだ。彼もまた、マネージャーとして"モンスター"井上尚弥との大一番に挑む。

■取材協力「おでん ふく」

ボクシング世界三階級制覇王者・中谷潤人を

追いかけ続けたノンフィクション!!

『超える 中谷潤人ドキュメント』(著・林 壮一)

2025年3月5日(木)発売

全米最悪の犯罪多発地域で名トレーナーに師事、拳ひとつで道なき道を歩んできた孤高の逆輸入ボクサーのリングに懸ける想い、家族との絆、かつての名王者との交流、そして運命の頂上決戦へ――。本人はじめ家族、日米の多数関係者に徹底取材!

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著者プロフィール

  • 林壮一

    林壮一 (はやし・そういち)

    1969年生まれ。ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するもケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。ネバダ州立大学リノ校、東京大学大学院情報学環教育部にてジャーナリズムを学ぶ。アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(以上、光文社電子書籍)、『神様のリング』『進め! サムライブルー 世の中への扉』『ほめて伸ばすコーチング』(以上、講談社)などがある。

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