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【短期集中連載】中谷潤人、フィラデルフィアへ行く 迎えた元ヘビー級王者ティム・ウィザスプーンは「チャンプ、よく来たな」 (2ページ目)

  • 林壮一●取材・文 text & photo by Soichi Hayashi Sr.

 ティムがベンサレムで借りている2LDKのアパートを私がノックしたのは、この日の午前7時20分。再会の挨拶を済ませると、彼はノートパソコンの画面をこちらに向けた。6月8日に中谷が6ラウンド終了TKOで西田凌佑を下した一戦が流れていた。

「あらためて見た。ジュントはファーストラウンドから出たよな。格下を攻め落とすには、初回からガンガン攻めるのもアリだ。が、この相手ならいつものジュントのスタイルでも、間違いなくノックアウトできたね。シャープな左ストレートを持っているのに打たなかったのは、痛めていたからか?」

 うなずくとティムは、画面を食い入るように見つめながら話した。

「ケガもあって、この闘い方にしたんだろうな。右アッパーの連打が光っているよ。相手は、苦し紛れのクリンチが多い。キャリアの差はいかんともし難いね。無敗の世界チャンプの統一戦と言っても、31戦目のジュントと11戦目のニシダじゃプロボクサーとしてのもまれ方が比較にならない。

 ジュントが左の拳をかばいながらファイトしていたのなら、多少、大振りになってバランスが崩れる場面があっても仕方ない」

【井上尚弥とのメガ・ファイトで勝負の明暗を分けるのは?】

 中谷は、マネージャーを務める2つ年下の弟・龍人と共に日本時間6月17日、午前10時40分発の便でアメリカに向かい、シカゴを経由して、ユナイテッド2182便で14時24分にフィラデルフィアに到着する予定だった。

「もうバンタムに敵はいない。ついに、"モンスター"ナオヤ・イノウエ戦だな。世界中が注目するメガ・ファイトだ。全勝で、複数の階級を制している名チャンピオン同士。2023年7月の4冠統一ウエルター級タイトルマッチ、テレンス・クロフォードvs.エロール・スペンス・ジュニア戦以来のビッグマッチだ。ワクワクするぜ」

 ティムは、笑みを浮かべながら「本当に、そんなトップ選手が俺を訪ねて来るんだな」と言った。そして、こう付け加えた。

「このアパートは、メキシコ、プエルトリコ、インド、ギニアの人なんかが生活している。みんな、気のいい隣人だ。でも、俺の住むH棟はゴキブリだらけ。別棟ではネズミが出るらしい。15の娘と暮らすには安全でいいが、可能なら直ぐにでも引っ越したいよ」

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