【短期集中連載】中谷潤人、フィラデルフィアへ行く 迎えた元ヘビー級王者ティム・ウィザスプーンは「チャンプ、よく来たな」 (3ページ目)
家賃は1600ドル。67歳の彼が毎月受給する年金も、同じ金額だった。
「息子も、彼のワイフもここに来たことは一度もない。寄りたくないんだろう。こうやって、お前が来てくれることがうれしいぜ」
ティムもこの日は起床が早かったので、少しソファで仮眠しようということになったが、互いに寝つけず、井上尚弥vs.ラモン・カルデナス戦の映像を見ることにした。
元世界ヘビー級チャンプは、2ラウンド終盤にカルデナスの左フックで井上がダウンするシーンを何度か巻き戻した。
「最初に目にした時は、イノウエが倒れたことに驚いた。1年前の東京ドーム(ルイス・ネリ戦)でもダウンを喫したが、同じようなパンチだ。不用意に喰らったのか、一瞬、あの角度が視界から外れたのか、そのあたりは微妙だな。
ただ、これだけは言える。ジュントは、ネリ、カルデナス以上に鋭いパンチを持っている。リーチも長いし、背もモンスターより高い。そのアドバンテージを、どう活かすかだ。そして、ディフェン力が明暗を分ける」
いつも陽気な彼が、険しい表情になってもう一度告げた。
「いいか。このメガ・ファイトはディフェンスで決まる」
【中谷がフィラデルフィア到着。ティム推薦の店で名物を食す】
その後、我々は13時15分にベンサレムを出発し、フィラデルフィア国際空港へ向かった。手荷物受取所のターンテーブルで「ここは寒いな」などと言い合いながら日本からの客人を待っていると、15時少し前に、黒いTシャツに、同色のハーフパンツという出立ちのWBC/IBFバンタム級チャンピオンが現れた。
すかさずティムが駆け寄り、「よう、チャンプ、よく来たな」と抱擁を交わす。中谷も、はちきれんばかりの笑顔を浮かべた。
フィラデルフィア国際空港で中谷を出迎えたティムこの記事に関連する写真を見る
レンタカーに荷物を詰め込むと、バンタム級王者は空腹を訴えた。そこで、当地の名物である、フィリー・チーズ・ステーキを食べることにした。元ヘビー級チャンプが「最良」と推薦する店を目指した。
レンタカーのハンドルは私が握り、助手席にティム、その後ろに中谷、運転席の後ろには龍人が座った。ティムが好むのは、イタリアンマーケットの一角にある「パット」という店であった。
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