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井上尚弥vs.中谷潤人を米ボクシング関係者たちはどう見る? モンスターの防衛戦を見て予想を変えた識者も (3ページ目)

  • 林壮一●取材・文 text & photo by Soichi Hayashi Sr.

 ラクマン・ジュニアも5月4日は、井上が8ラウンドでカルデナスを下すシーンを会場で目にした。

「ナオヤ・イノウエは本物だよ。パウンド・フォー・パウンドのトップ争いをするに相応しい逸材だ。いつもノックアウトを狙って、エネルギーに満ち溢れたファイトをする。そして、必ず挑戦者を倒す。そこが魅力さ。

 2020年にラスベガスで試合をした時、記念撮影を求める幼いファンへの対応に温かい人柄が滲み出ていた。あんな姿を見たら、誰だって応援したくなるよ」

 ボクシングメディアで働いているだけに、ラクマン・ジュニアも当然のように中谷を知っていた。

「きれいなボクシングをする、いい選手だね。でも、イノウエほどじゃない。2人がぶつかれば、トーキョードームは満員になるし、ジャパニーズファンは盛り上がるだろう。でも、両ファイターには差があると俺は思う。イノウエのプレッシャーに、ナカタニがロープを背負う展開になるんじゃないか。中盤までに、モンスターが本領を発揮して仕留めると予想する。

 イノウエの才能って、類を見ないレベルだ。並の世界チャンピオンじゃない。同じウエイトや下の階級の選手じゃ、太刀打ちできないだろう」

【「コンディションがいいほうが勝つ」「ジュントにチャンスを感じるようになった」】

 井上と中谷、両チャンピオンの世界タイトルマッチで、何度も選手コールを行なっている、名リングアナウンサーのジミー・レノン・ジュニアにも、ジャパニーズのメガ・ファイトについて質問してみた。

リングアナウンサーのジミー・レノン・ジュニア氏リングアナウンサーのジミー・レノン・ジュニア氏この記事に関連する写真を見る

「ナオヤもジュントも私にとっては友人だから、とても答えづらいなぁ......」としながら「今の時点では、ナオヤにややアドバンテージがあるように感じる。とはいえ、背が高く、リーチのあるジュントが来年春の激突までに、どのくらい伸びるかも実に興味深い。彼らが戦うのが2026年の5月であるのなら、当日、コンディションがいいほうが勝つということになるかな。実力的に大きな差は感じられない」

 レノンは、"あの声"でそう答えた。

 そして、5月4日のT-モバイル・アリーナで隣り合わせた『ヴェンチュラ・カウンティー・スター』紙のフランシスコ・サラザール記者にも日本人頂上決戦を占ってもらった。サラザールは、井上vs.カルデナス戦前、「うーん。実力伯仲だが、イノウエの経験値を買うかな。55/45でモンスター有利と予想する」と話していたが、井上のダウンシーンを目撃し、50/50と数字を変えた。

記者のフランシスコ・サラザール氏記者のフランシスコ・サラザール氏この記事に関連する写真を見る

 ボクシング記者歴25年の49歳は「カルデナスの左フックをヒットされたシーンを目の当たりにし、ジュントによりチャンスを感じるようになったよ」と語った。

(後編:井上尚弥と中谷潤人の試合予想にノニト・ドネアも「興奮してくる!」伸び盛りの中谷は今後、パッキャオのようになれるか>>)

著者プロフィール

  • 林壮一

    林壮一 (はやし・そういち)

    1969年生まれ。ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するもケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。ネバダ州立大学リノ校、東京大学大学院情報学環教育部にてジャーナリズムを学ぶ。アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(以上、光文社電子書籍)、『神様のリング』『進め! サムライブルー 世の中への扉』『ほめて伸ばすコーチング』(以上、講談社)などがある。

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