山中慎介は激闘の「武居由樹vs比嘉大吾」で勝負を分けたポイントをどう見たか 10.13「井上拓真vs堤聖也」も予想した (2ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

【最終ラウンド、なぜ比嘉の手が出なくなったのか】

――比嘉選手はもともとフライ級で、スーパーフライ級を飛ばしてバンタム級に階級アップしました。

「バンタム級に上げてから堤聖也と引き分けて、西田凌佑には負けましたが、直近4試合は4勝2KOと、うまく適応していたと思います。ただ、フライ級時代ほどフレーム(身長、体格、リーチ)を活かしたボクシングは当然難しくなりますね。相手の耐久力も上がりますし」

―― 一方の武居選手はいかがでしたか?

「武居がいい距離やタイミングで当てた強いパンチは、少なかったと思います。パンチが強い選手ですから、クリーンに当たっていればもっと効いていたでしょうし。アッパーにしても、比嘉のグローブをかすめたりして、武居本来の強いパンチは決まらなかった印象です」

――作戦もあると思いますが、武居選手が得意とする遠い距離からの左ストレート、左のボディーストレート、飛び込んでの左フックなどがあまり見られなかったように思います。

「そうですね、比嘉に警戒されていたのもあると思います。それでも武居は、遠い距離でポイントを取るうまさを見せていましたね」

――11ラウンドに比嘉選手がダウンを奪って、迎えた最終ラウンド。比嘉選手の手が出なくなり、防戦一方の展開になりました。

「疲労があったのは間違いないですが、メンタル的な部分もあったかもしれません。11ラウンドにダウンを奪ったことで、逆に張りつめていたものが一瞬緩んだ、あるいは途切れた可能性はあります。『最終ラウンドをしのげば勝てる』という気持ちがふと浮かんだのかもしれませんね」

――ダウンを奪われた武居選手は前に出続けましたね。

「よくあれだけのスタミナが残っていましたよね。前回のジェイソン・マロニー戦では最終ラウンドにガス欠になりましたが、今回はまったく逆の展開でした。あの時の経験が、今回の最終ラウンドにつながったと思います。ダウン寸前まで追い込んでいましたからね」

――武居選手は、今回も厳しい試合を乗り越えました。

「2試合とも最終ラウンドはメンタルが勝敗を分けたと思います。比嘉戦は、前回の反省を活かしてスタミナを強化して、ペース配分も考えて試合に臨んだはずです」

――敗れた比嘉選手は、どこか晴れ晴れした表情で引退を示唆しました。少しもったいないように感じますが。

「まぁ、比嘉らしいとは思います。さっぱりした表情でしたし。でも、時間が経って気持ちが変わる可能性もあるでしょう。まだ29歳ですから、気持ちが戻れば、まだまだ戦える年齢ですよ」

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